夏の虫こぶ いろいろ


2004年9月20日


(樹木の名前、および写真をクリックすると、樹木の説明にジャンプします。)

虫こぶを季節によって分類することが、適切なのかどうかよく分からないが、

春に多かった虫こぶが、夏には見えなくなり、

夏になると、別の木に何故か目立つ虫こぶがあったりする。

そこで、夏になると見つけやすい虫こぶ、あるいは夏に見つけた虫こぶを、今回は紹介する。

翻って、前回の虫こぶの説明は、春に見つけた虫こぶを集めていた。

では早速、夏の虫こぶの代表選手を紹介する。

この虫こぶを見て、虫こぶに興味を持ち、やみつきになった、と言う人も多いようだ。

エゴノネコアシと言う。

前回紹介した命名規則と少し異なるが、推測がつくだろうか。

本当は、エゴノキ・メ・ネコアシ・フシ、と言うのが正しい命名なのだろうか。


6〜7月にエゴノキの枝の先の方(側芽)を、つぶさに観察すると、ほぼ必ずこれがある。

バナナの房のたば、と言うか猫の足のような固まりである。

今年(2004年)は、エゴノキの実の成りは悪かったが、この虫こぶは多かったようだ。

アブラムシにより形成される。アブラムシは、8月には次の寄生先アシボソ(イネ科)に引っ越すと言う。


次にヤナギの葉の虫こぶを2つ。

 

6月に川崎でシダレヤナギの葉に見つけたのが、左の虫こぶ。

シダレヤナギハオオコブフシ、ハマキハバチの一種により形成され、中には1匹の幼虫がいるらしい。

8月の大井川東俣で見つけたのがオオバヤナギの葉に付く、右の虫こぶ。

ヤナギハヒメコブフシらしい(?虫えい図鑑には宿主としてオオバヤナギは載っていない)。


大井川東俣で、ダケカンバの葉を見ていたら、こんなしわくちゃの葉を沢山見つけた。

 

葉を裏返すと、アブラムシが沢山いた。これは虫こぶだ、多分虫こぶ、きっと虫こぶ。

単にアブラムシが着いた葉とも言えるが、ウメにもウメハチジミフシがあり、よく似ている。

家で「虫えい図鑑」を調べてみたが、載っていない。

そこで、ダケカンバハチジミフシと命名することにした。


虫こぶには、人間にとって有用なものもある。

マタタビの実にタマバエが卵を生むと虫こぶができる。マタタビミフクレフシと言う。

 

マタタビの正常な実                                虫こぶとなった実

マタタビを木天蓼と書くが、漢方薬で言う木天蓼(もくてんりょう)とはこの虫こぶのこと。

中の虫を殺し、乾燥させて粉末にしたり、天蓼酒としたりして強壮剤に使う。


ヌルデの翼葉にできる虫こぶが、附子(ふし)あるいは五倍子(ごばいし)と呼ばれ染料などに使われる。

 

虫こぶはヌルデミミフシと呼び、上の写真のように、黄緑色あるいは赤みを帯びた不定形袋状である。

中にはヌルデシロアブラムシが、多数同居生活をしている。

この虫こぶには、タンニンが多く含まれていて、染料あるいは漢方薬として利用されている。


ちなみに、ヌルデミミフシの代用品としてよく使われる木に、五倍子の名前が付いている。

木五倍子、八丈木五倍子、夜叉五倍子、大葉夜叉五倍子など。どれも種子にタンニンを含んでいる。

この場合の五倍子はフシと読み、順にキブシ、ハチジョウキブシ、ヤシャブシ、オオバヤシャブシ。


同じヌルデの翼葉にできる虫こぶをもう一つ。

ヌルデハベニサンゴフシと呼ぶ。別のアブラムシの寄生による虫こぶで、形状がサンゴに似ているための命名。

この虫こぶにタンニンが含まれるのかは不明。

ヌルデミミフシと同様に、10月には袋の先端が開口し、有翅虫(ハムシ)が出現する。


虫こぶのできる木

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