春の虫こぶ いろいろ
2004年5月12日
(樹木の名前、および写真をクリックすると、樹木の説明にジャンプします。)
樹木の葉や枝を観察していると、おや??っと思ってしまう、変なものが見つかるときがある。
それは多くの場合、虫こぶ(虫えい)だと思ってよい。
少していねいに時間をかけて、葉の裏表、別の枝、隣の樹と探していくと必ず見つかる。
見つけやすい樹、見つけにくい樹はあるようだ。春はエゴノキ、サクラ、ブナ、エノキなどが見つけやすい。
虫こぶは、常に瘤の形をしている訳ではない。
実に綺麗なものもあれば、何やら不気味なものもある。
ブナハアカゲタマフシ サクラハチヂミフシ
ブナハアカゲタマフシは、奥多摩の稜線で偶然見つけた。
表面は写真の通り、柔らかな綿状の毛で覆われており美しいが、中にはタマバエの幼虫が1匹いる。
サクラハチヂミフシは、サクラの種類を問わず、枝の先端を観察していると、どこででも見ることができる虫こぶだ。
いかにも病的で不気味である。巻いてる葉を無理やり開くと、中にはアブラムシがたくさんいる。
どのようにしてこの虫こぶが作られるのか。
虫こぶを作る虫は、アミノ酸や植物ホルモンを出して、植物の細胞を異常増殖、発育させるのだ、と言われている。
しかし、すべての虫こぶの形成過程が説明できている訳ではないようだ。
ブナハアカゲタマフシの赤い毛は、ブナの葉の変形である。どうすればこんなものができるのか感心するしかない。
以下、この時期に観察できる虫こぶと、その断面である。
ブナハキバツノフシ その断面。中にはタマバエ科の幼虫が1匹いる。
エゴノキメフクレフシ その断面。これもタマバエ科の幼虫が集団生活
虫こぶの名称は、「日本原色虫えい図鑑」によっている。
命名規則は、宿主名+形成部位+形状+「フシ」(エイであることを示す言葉)である。
ブナハアカゲタマフシは、ブナ+葉+赤毛玉+フシ
サクラハチヂミフシは、サクラ+葉+縮み+フシ
ブナハキバツノフシは、ブナ+葉+牙角+フシ
エゴノキメフクレフシは、エゴノキ+芽+膨れ+フシ、となる。
この時期の虫こぶをもう少し。
エノキハトガリタマフシ(エノキ葉尖り玉フシ) ハルニレハフクロフシ(ハルニレ葉袋フシ)
エゴノキハツボフシ(エゴノキ葉壺フシ)
エノキハトガリタマフシはタマバエ科の幼虫、ハルニレハフクロフシはタマワタムシ科の幼虫
エゴノキハツボフシはタマバエ科の幼虫、がそれぞれこぶの中で生活している。
虫こぶを作る虫は、分類すれば害虫と言える。
つまり植物を何らかのかたちで、利用する人間から見れば邪魔者、害虫である。
最も有名な被害は、栗の栽培におけるクリタマバチの被害だ。
植物から見ても決して益のある虫とは思えない。
クリメコブズイフシ(クリ芽こぶズイフシ)-クリタマバチによる
虫こぶは、幼虫を守るゆりかごのようで、安全そのものに見えるが、実は大きな危険も伴う。
つまり自分も逃げられないのだ。
遠くからでも見つけやすい、こぶの中には必ず虫がいるとなれば、いろいろな天敵が虫こぶを狙う。
事実、虫こぶの中に、代わりの寄生者がいることがよくあるそうだ。
鳥の格好の餌になりそうな虫こぶを見つけた。
アオキの実を観察していると、5月に赤い実がまだ見つかることがある。
健全な実は、冬に赤くなり春までには落ちてしまう。
何で残っている実は、何故中途半端なのが多いのだろうと思っていた。
5月のアオキの実
実を切ってみると
要するに、5月に残っているアオキの実は全て虫こぶだったのだ。
果実の中には、タマバエの幼虫が何匹もいる。最大18匹いるそうだ。
子育ての時期の鳥にとって、アオキの実に虫まで入っているなんて、栄養満点の餌だと思う。
だけど、ヒヨドリやムクドリがこの実を取っているのを、あまり見たことが無い。何でだろう。