自然公園指導員日誌(2006年9月3日蛭ケ岳)

 

今年の4月30日に、裏丹沢、神の川の流域(檜洞丸〜蛭ケ岳〜姫次)をグルリと一周した。承知はしていたが厳しかった。写真を撮っている余裕も無かったために、ホームページに紹介することができなかった。今回は、檜洞丸を省略し、金山谷乗越に登り、蛭ケ岳〜姫次を一周した。初めは余裕で写真を撮っていたが、蛭ケ岳では、前回の時と同じ時刻になってしまっていた。結局は急ぎ足になり、最後は倒れるように日蔭沢の車にたどり着いた。
稜線では、爽やかな風が吹き、歩く人の姿も少なく、静かで気持ちの良い1日だった。

(例によって、樹の名前、写真をクリックすると、説明ページにジャンプします)

 

9月3日(日) 神の川日蔭沢橋 〜 広河原 〜 金山谷乗越 〜 蛭ケ岳 〜 姫次 〜 風巻の頭 〜 日蔭沢橋

日蔭沢橋から広河原までは、林道神の川線を歩く。この林道は、犬越峠を越えて中川の箒沢に通じているが、丹沢の他の林道と同様、一般車は通行止めになっている。開放すれば、道志川と酒匂川をショートカットでき、車の通行はすごい量になることが見えている。このまま通行止めにしておく方が、賢明だと思う。
広河原に至り、林道が大きく曲がるヘアピンカーブから、川に降り、登山道に入る。このルートは、手元の登山地図にも載っていないが、利用者は多いようだ。ただ入り口が分かりづらい。初めの案内板に従うと見失う。案内板には源造尾根とある。
左:林道脇に、初めに出てくる案内
右:初めの案内を無視して、林道を進み、ヘアピンカーブの先端まで行くと、瓦礫の下に、別の案内板がある。その案内に従って、土手を上流に進むと、渡渉点を示す案内がある。

人工林の中をしばらく登ると、源造尾根に出た。あとは尾根筋をひたすら登っていく。金山谷乗越が近くなると、地形が複雑になるようで、尾根と谷が錯綜している。新たな尾根筋に出ても、主稜線が確認できないようなら、尾根を下らないほうが良い。金山谷乗越には、分岐点を示す小さな看板がある。
左:金山谷乗越近くで、尾根や谷が入り組む。
右:主稜線との分岐点。小さな案内板がある。

蛭ケ岳の山頂が見え隠れしながら、主稜線はしばらくアップダウンを繰り返し、一旦大きく登り詰めると、臼ヶ岳山頂になる。このあたりはブナとヒコサンヒメシャラの混生林が続く。臼ヶ岳山頂を越えるとヒコサンヒメシャラは少なくなる。

金山谷乗越付近から見る蛭ケ岳                            臼ヶ岳山頂近くに広がるシロヨメナの群生

臼ヶ岳山頂近辺でブナの枝を見ると、たわわに実が成っていた。しかし味見をしようとすると、ことごとく虫食いになっていた。また歩いていても、緑色のまま殻斗が、バラバラになって落ちている実が多い。丹沢に、ブナの実生や稚樹が少ないのは、そもそも実がなっても、種子に発芽能力が無いのではないか、と思わせられる。
まだ緑色のブナの殻斗
健全な実は、枝から落ちない。開いた殻斗から、種子だけが地上に落ちる。春になり枝先を見ると、殻斗だけが枝についている。
東北〜北関東のブナは、昨年異常豊作だった。だから、今年はほとんど実っていない。丹沢も同じかと思っていたら、少し地域差があるようだ。

蛭ケ岳山頂は、晴天だった。気がつくと昼を大分過ぎていて、気分がすこし焦る。ビールを飲み、昼飯を食べ終わると、山頂小屋を後にする。そして、気がつくと山頂での写真を撮り忘れていた。ま、しょうがない。
蛭ケ岳山荘のマスタは、山荘にパル君と言う、愛犬を連れてきている。山頂で休む登山客にすり寄り、お昼のおこぼれを頂戴している。おとなしいし、かわいい犬なので、通常は何の問題もないのだが、犬の嫌いな人はどうするのか、シカと出会ったらどうするのか、など心配してしまう。山小屋のご主人にご意見できずそのまま辞した。

まだ秋の初めだが、気の早い木の葉は、微妙な色合いになっていた。
左:コミネカエデ
右:イタヤカエデ

左:ゴヨウツツジ
右:サラサドウダン

一方、木の実も、実りの秋の準備中。

サンショウの実(林道にて)           ネジキの実                     ヤブデマリの実

蛭ケ岳と姫次の間は、ゆるやかなアップダウンの続く、幅広で快適な尾根である。飲み水が不足し、悩んだ末、原小屋平で水を補給する。水場は原小屋沢を100mほど下ったところにあった。時間とエネルギーのロスを代償に、渇きを潤した。

左:ゆるやかなブナ林の中を行く
下:神の川の広河原。林道のUターン部から登り始めた。




姫次から先は、足の痛みに耐えながら、薄暗くなる時間との競争になった。風巻ノ頭から神の川までは、屈指の下り坂である。足を引きずりながら、林道に出たときには、薄明かりだった。

姫次からみた蛭ケ岳(左)。右端が金山谷乗越               これから下る風巻ノ頭。後ろにそびえる山が大室山

 

 

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