キハダ 学名 Phellodendron amurense
別名 ヒロハキハダ、キワダ
黄柏(中)
黄膚 分類 ミカン科キハダ属 (落葉高木)
樹皮の内側(内樹皮)が鮮黄色のため。別名は、オオバノキハダに対して、小葉が少し広いための名。 原産・分布 北海道、本州、四国、九州、アジア東北部
神奈川県 変種のオオバノキハダが丹沢、箱根の山地にやや稀に見られる。
用途 建築・家具・器具材
山地で、湿り気のある林内に生える。樹高は25m、胸高直径が1mに達する。

丹沢
風巻の頭
060730
キハダ樹
樹皮は淡黄灰色、コルク層が発達し、縦に浅く広く裂ける。樹齢や環境で樹皮の印象はかなり異なる。
キハダの樹皮から作られる修験者の秘薬が陀羅尼助→「こぼれ話」
★薬効★苦味健胃薬、外用消炎薬(生薬名「黄柏(おうばく)または黄檗」 樹皮からコルク層を取り去り乾燥したもの)。成分はベルベリンなどのアルカロイドやステロイド、高級脂肪酸エステルなどを含む。


港区
自然教育園
0203
キハダ幹
葉は奇数羽状複葉で対生する。小葉は2〜6対あり、葉身は卵状長楕円形、先は尖る。縁には低く不揃いな鋸歯がある。葉軸および脈はほとんど無毛。
県内西部山地に多いオオバノキハダは、葉軸や葉裏に細毛が多い。
★食★カラスアゲハモンキアゲハ


港区
自然教育園
040801
キハダ葉
雌雄異株。5〜7月に本年枝の先に円錐花序をつける。
雄花は雄蕊が5本あり、花弁より長い。
雄花

丹沢
三ケ瀬川
100624
キハダ花
果実は1cmほどの球形の核果。熟すと黒色になる。ミカン科特有の強い芳香がある。
★食★ヒヨドリツグミ、イカル、アカハラ
若実

丹沢
中川東沢
090817
キハダ実
一つの果実に核(種子)は5つある。 種子

丹沢
中川東沢
090817
キハダ冬芽
一年枝は太く無毛で赤褐色〜黄褐色、皮目が大きい。枝の先に、冬芽が2個並ぶ。冬芽は、円錐形〜半球形で、褐色の毛が密生する。芽鱗は2枚。いわゆる葉柄内芽の樹で、葉痕はU〜O字になり、冬芽を囲む。落葉後に、始めて冬芽が見える。 冬芽

川崎市
東高根公園
040227
キハダ冬芽
冬に葉が落ちると、梢には黒い実が目立つ。

港区
自然教育園
0203
キハダ梢
こぼれ話 「陀羅尼助」
1300年前の奈良時代に、疫病が流行り腹痛に悩む人が多くなったときに、役の小角(えんのおづの)行者が作り人々を助けた薬として有名なのが、和薬の元祖とされる陀羅尼助である。キハダの皮を剥いで煮詰め煎じ薬を作ったとされる。
陀羅尼助の名前は、役の行者がオウバクのエキスを煮詰める際に念を込めて陀羅尼経を唱えたためとされる。僧侶が陀羅尼を唱える際にその苦味で眠気を防いだ故の名とする説は、本来の呪文としての陀羅尼とは相いれないような気がする。
陀羅尼助はその効能から山伏により全国に広められた。また旅人の携行に便利なように丸薬とされ「陀羅尼助丸」と呼ばれるようになった。製造所によりさまざまな添加物が用いられた。本家の吉野大峰山ではゲンノショウコ、ガジュツ(紫ウコン)が添加される。また吉野山ではゲンノショウコ、センブリ、延命草などが添加されている。(写真は吉野の山伏の店に並んだ陀羅尼助と丸薬)
変わったところでは、奈良の當麻寺に伝わる陀羅尼助にはアオキのエキスが含まれている。アオキを入れると、黒光りして美しい陀羅尼助になるそうだ
アオキは外用薬として、火傷、腫れ物、凍傷、虫刺されなどの妙薬とされた。葉の汁を煎じ煮詰めたり、葉をそのまま焙って柔らかくして使ったようだ。内服薬としては、便秘薬として使ったと言われる。
かつて當麻の板状の陀羅尼助の効能には腫物、やけど、切り傷、さらにはヤニ目、カスミ目なども挙げられていたとされる。まさに万能薬だったわけで、山伏が携行するには持って来いの薬といえる。

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