いろいろな紅葉
2004年11月14日
2007年11月23日
秋は、樹に咲く花の種類は少なくなるが、代わりに葉が、様々に色変わりして楽しませてくれる。
紅葉とは言っても、赤もあれば黄色もあり、その濃淡や中間色の変化が実に美しい。
秋になると何故、葉の色が変わるのか。
早い話、紅葉そして落葉は、葉の老化現象である。日照が短くなったり、気温が低くなるにつれ進行する。
葉緑素の分解などによる葉の老化と、葉柄のつけねに離層と呼ばれる特殊な層の形成、とがポイントとなる。
まず、葉緑素(緑色)の分解に伴い、それまで目立たなかった黄色の色素(カロチノイド)が目立ってくる。
また、離層のために、水や光合成によって作られた栄養物が、自由に行き来できなくなる。
そのために葉に残されたタンパク質が、色々複雑な変化の末、アントシアンなどの赤色の色素になる。
と言うのが一般的な解説だが、まだまだ未解明な点が多いそうだ。
左の写真はソメイヨシノの葉である。
この写真からは、葉緑素の分解が、どこから進むかが分かる(ような気がする)。
右の写真は、少し分かりにくいがダンコウバイの葉である。
この黄葉は、葉脈を緑色に残している。どちらにしろ葉の先端は、黄変しているのが分かる。
紅葉したいろいろな葉を、よく見ていると面白い現象に出会う。
例えば上の写真。ハナミズキの赤い葉を1枚1枚見ていたら、重なっている部分が緑色をしていた。
これが、葉の日焼けなら何のことはないのだが、問題は紅葉である。何故だろう。
以下、推測だが。皆さんはどう考えます?
葉の重なった部分は、日当たりが少ないため充分な光合成が行えず、栄養物の生産量が少なかった。
従って、離層の形成が始まっても、そこだけタンパク質が少なくアントシアンが形成されない。
葉の緑色はまだあざやかなので、この葉の葉緑素の分解は遅い(あるいは少ない)のかもしれない。
リンゴの実の表面に、文字や絵を書いたシールを貼っておき、赤くなった時に剥がすと、緑色の文字や絵ができる。
そんなリンゴを見たことがあるが、同じ原理なのだろう。
紅葉が、葉により濃淡の差があったり、1枚の葉でもまだら模様になるのは、
日照の微妙な違いが、原因ではないのかと思う。
微妙な色をしているのはサクラの葉である。
緑と黄色と赤がいり混ざっている(左の写真)が、不規則ではない。
ふと思いついて、葉を斜めにして見ると赤が増す(右の写真)。葉が傾いて斜め上から日が当たっていたのだろう。
葉緑素の分解と、離層の形成、アントシアンの合成が同時に進行していた葉である。
紅葉した柿の葉を見ていると、ときどきこんな葉が見つかる。丸い模様がある。
これは応用問題だ。推測しかできないが、詳しく分かる方は、ご教示お願いしたい。
丸い模様は、多分、菌類による病気だと思う。中心から、茶色-黒-緑の同心円になっている。
茶色は葉が枯れ、菌糸が集まっている部分。緑色は、菌類によって栄養物が消費されるため、赤い色素が合成されない部分。
さらに言えば、葉緑素の分解を、菌類が妨げている可能性もある。
同じ種類の樹なのに、赤くなったり黄色くなったりする場合がある。
先頭に示したケヤキの写真もそのひとつ。
平塚の市街をぬける一号線のケヤキ並木は、ケヤキだけとは思えない七変化を見せている。
原理としては、離層の形成と葉緑素の分解とが、どちらが早いかで色に違いが出るのだと思う。
離層が先にできれば赤くなり、葉緑素が先に分解すれば黄色くなる、と言うところまでは容易に推測できる。
しかし隣接したケヤキで、なぜこれほどはっきりした違いが出るのかは分からない。単なる偶然なのだろうか。
紅葉とは少し異なるが、枯れ葉が香る話。
カツラの枯れ葉は、甘い香りがすることは有名だが、その理由はよく分かっていないらしい。
理由、と言う意味は2つあって、生理学的に何故と、生態学的に何故である。
生理学的には、匂いの素を分析すれば分かるのだろう。葉に残された糖類がなせる業のような気がする。
バニラと言う香料は、ラン科の植物の豆から作るが、そのままでは香りは無いそうだ。
豆を発酵させることにより、初めて香りが出るという。カツラの葉も同じ原理のような気がする。
生態学的には何故なのか。カツラの枯れ葉を好物とする菌類がいて、特別な共生関係がある、のかもしれない。