オミナエシ

学名 Patrinia scabiosifolia
別名 オミナメシ、チメグサ、アワバナ、ボンバナ
女郎花 分類 オミナエシ科オミナエシ属 (多年草)
オミナは美しい女性を表し、エシはベシ(推量)の転じたものとして「女らしい花」の意とする説。他にエシをメシの転じとして、花を細かい粟の飯に例えたとする説などがある。 原産・分布 北海道、本州、四国、九州、沖縄。朝鮮、中国、シベリア東部。
神奈川県 全域に分布するが山地近くの草地に限定され少なくなっている。
花の時期 8月〜10月


日当たりの良い山野の草地や林縁に生える。背丈が1m近くになり咲くと目立つ。種子繁殖以外に根茎が横に這い新しい株を作る。
秋の七草の一つ。「こぼれ話」参照。
★薬効★消炎、解毒。
生薬名は敗醤(はいしょう)で、全草あるいは根を乾燥させたものを用いる。成分はサポニン、精油など。

上野原市秋山 140808


葉は対生し羽状に深く分裂する。裂片は長楕円形で鋸歯がある。

上野原市秋山 140808


茎の上部で分岐し、先に散房状の花序に黄色い花を多数つける。
1つの花は4〜5mm、花弁は5裂、雄しべは4つ。
緑色を帯びた黄色のことを女郎花と呼んだ。
送粉 虫媒
花言葉「美人、はかない恋、親切」

上野原市秋山 140808


実は3mmほどの扁平な長楕円形の痩果。仲間のオトコエシのような翼もなく、鳥がついばむようなこともなく、種子散布方法としては下に落ちるしかない。
実のなるころには風で倒れるが、草丈が高いのでその丈の分、親株より遠くに落ちることがわずかだけど自力散布なのかもしれない。

上野原市秋山 170918


若いロゼット。実生は約3年で花茎が立つようになる。
根生葉は楕円形で長い葉柄がある。中に羽状に裂けた葉が混ざる。

上野原市秋山 140808

こぼれ話 「秋の七草」
秋の七草は山上憶良の次の歌から始まるとされている。
「萩の花、尾花(をばな)、葛花(くずはな)、なでしこの花、をみなへし、また藤袴(ふぢはかま)、朝顔の花」
何てことはない、植物の名を並べただけの歌だ。万葉の時代の自由な空気と、作者の自然を愛でる心が作った名作なのだろう。ただしこれの前の歌と合わせて2首で秋の七草を定義している。
「秋の野に、咲きたる花を、指(および)折り、かき数ふれば、七種(ななくさ)の花」
オミナエシは万葉集では14首登場し、「乎美奈敝之」「娘子部四」「姫部志」「美人部師」などと表記されている。「女郎花」と表記されるようになったのは西暦900年代とされている。源氏物語(1000年前後)では「女郎花」の表記が使われている。いずれも女性、とくに美人を想起させる字が当てられていることが分かる。ちなみに「女郎」の元の意は「上臈(貴婦人)」とされ、決して遊女のことではない。
春の七草に入れて食べ、無病息災を願う行事だったのに対し、秋の七草は、山上憶良の歌で分かるように野の花を愛でる草である。季節からお月見のときに飾る花にも使われる(写真は中秋の名月)。尾花はススキを、朝顔の花はキキョウあるいはムクゲなどを指したとされている。
現代での秋の七草を見てみると、葛花(クズ)は紫色の綺麗な豆の花を咲かせるが、農業や林業ではやっかいな蔓草で嫌われ者である。尾花もかつての使い道がなくなり、ただ除草の対象でしかない。一方、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウは河川管理や農業形態の変化による草地の減少に伴って減り続け、地域によっては絶滅危惧種に指定されている。山上憶良も嘆くことだろう。

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