クロモジ

学名 Lindera umbellata
別名 クロキ(古)、クロモンジ、トリシバ、フクギ、ネソ、モンジャ
黒文字 分類 クスノキ科クロモジ属 (落葉低木)
樹皮に黒い斑点がありクロキと呼ばれ、楊枝として使われていた。楊枝は宮中の女房詞では「〜モジ」をつける風習がありクロモジと呼ばれ、木の名にもなった。樹皮の皮目を文字に見立てた名(牧野)の説も。 原産・分布 本州、四国、九州、中国
神奈川県 ほぼ全域に分布する。山地や丘陵地の林内に多い。
用途 庭木、高級楊枝、結束用材、カンジキ
山地に生え、高さは2〜6mになる。やや暗い林内にも生えるが、林縁など明るいところの方が枝が茂り株は大きくなる。
枝の香りが良いことから、楊枝、箸、串、薬用など古くからいろいろ用いられた。そのための地方名が多い。


丹沢
八丁坂の頭
070916
樹皮は灰褐色または黒緑色で、丸いか縦長の皮目がある。
クスノキ科の特徴で、枝を折ると、独特の香気がある。高級楊枝(下欄「こぼれ話」参照)や細工物に使う。明治36年刊の「大日本有用樹木効用編」には、伊豆では香油を製して外国に輸出する、とある。

 


丹沢
水の木
040430
クロモジ樹
葉は互生だが、枝先に集まる。葉身は、長楕円形で薄い洋紙質、鋭尖頭、基部はくさび形。縁は全縁、初めは両面に軟毛がある。後に表面は無毛、裏面は葉脈上に毛が散生する。
★薬効★関節痛、リウマチ。民間療法で枝葉を浴槽に入れて入浴する。


丹沢
水の木
040430
クロモジ葉
4月に、葉の展開と同時に、小枝の節に散形花序を出し、淡黄緑色の小さな花を多数付ける。
仲間のアブラチャンダンコウバイが黄色い花が先に開くのと異なり、新葉の緑が混ざる。
芽吹き

上野原市
秋山
140410
雌雄異株雌雄異花
雌花には1個の雌しべと、仮雄しべ9個が付く。
雌花

丹沢
仏果山
050417
クロモジ雌花
雄花には雄しべが9個ある。
送粉 虫媒
花言葉「誠実で控えめ」
雄花

丹沢
仏果山
050417
クロモジ雄花
果実は5〜6mmの液果。9〜10月に黒く熟す。

丹沢
八丁坂の頭
070916
クロモジ実
果実には一つの大きな種子が入り、種子も黒い。胚の部分に薄緑色の斑点がある。 種子

丹沢
八丁坂の頭
070916
クロモジ実
クスノキの仲間の落葉樹は、黄葉のきれいなものが多い。クロモジも秋が深まると、低木の中では鮮やかに目立つ。 黄葉

上野原市
秋山
二十六夜山
171106
クロモジ黄葉
冬芽は、葉芽と花芽がある。葉芽は紡錘形で芽鱗が2〜4枚。花芽は、先のやや尖った球形。
冬芽

030330
クロモジ冬芽
「虫えい図鑑」には、クロモジの虫コブは掲載されていなかった。クスノキ科で似ているものは、ヤブニッケイの芽にできる、ヤブニッケイツボミフクレフシがあるが、季節的なタイミングも異なるので、同じ寄生主かどうか、よく分からない。
名付けて、クロモジツボミフクレフシとなるが。
虫コブ

丹沢
八丁坂の頭
070916
クロモジ冬芽
こぼれ話 「雨城楊枝」
クロモジは、暖地の里山に、普通に生えている。その楊枝はどこでも作られていたのだろう。

千葉県君津市久留里では、古く江戸時代から、このクロモジの楊枝を特産品としていた。久留里藩の藩士が貧しさをしのぐため、内職として楊枝を作っていたらしい。昭和初期になって、藩城の異名である雨城の名を使った、「雨城(うじょう)楊枝」の名で売られ、千葉県の伝統工芸品になっている。
写真は東大千葉演習林内の森林博物資料館にあった展示品。様々な飾りをほどこした大小の楊枝がある。「守人」と銘が入っている。
樹皮の部分に、香りの成分が含まれるため、皮つきで楊枝は作られる。和菓子などに添えられている細工加工された楊枝は、誰でも見たことがあるのではないだろうか。


雨城とは、築城後3日に1回は雨が降り(「久留里記」)、戦のときにも長雨が続き、敵の攻撃を受けにくかったためについた名とされる。初めは上総武田氏が築城するが、里見八犬伝で有名な里見氏が戦国時代を治め、その後藩主は何回か代わり、最後は黒田氏が幕末までを治めた。城は1872年の廃城令によって解体された。
途中、土屋氏の治世時に後の儒学者新井白石が、二代目藩主に仕えて青年期をこの久留里城で過ごしたという逸話がある。写真は1979年に造られた模擬天守閣。

樹木の写真Top