ヤマグワ

学名 Morus australis
別名 クワ、シマグワ
山桑 分類 クワ科クワ属 (落葉小高木)
山に生えるクワの意。クワの旧仮名は「クハ」、蚕がその葉を食うさまから、食(クハ)れるものとしてついた名。 原産・分布 北海道〜九州。南樺太、朝鮮、中国、ベトナム、ビルマ、ヒマラヤ
神奈川県 全域に広く分布
用途 建材、家具、器具、学期、彫刻
山中に生えるが、植採されたものや、鳥の種子散布などによって街中にも多い。若木は成長が早く、枝が長く徒長する。
古くからの有用樹で、養蚕の他に、山菜として、家具材として使われた。
現代の養蚕に使われるクワは、中国原産の葉の大きい品種を改良したもの。
若い林

東京都
海の森公園
161113
ヤマグワ幹
樹皮は灰褐色で、縦に細かいすじがある。カミキリムシの幼虫をはじめ食害されることが多く、古い木は荒れた感じになる。
枝や葉を傷つけるとアルカロイドが含まれている白い乳液が出る。乳液は虫害を防ぐ効果があるが、蚕はこのアルカロイドに耐性を持っている。


横浜市
港北区
040411
ヤマグワ幹
葉は互生、有柄で、卵形または広卵形。分裂しないものから、2〜5裂するものまでさまざま。基部から3主脈が出る。縁には大小の鋸歯がある。

丹沢
世附
020616
ヤマグワ葉
雌雄異株。まれに同株の株もある。その場合は枝により雌雄が分かれているようだ。
雄花、雌花ともに、4〜6月に、本年枝下部の葉腋に穂状花序を付ける。雄花は4本の雄しべを持つ。
雌花

横浜市
港北区
100421
ヤマグワ雄花
雌花序は軸の先端に雌花が密集する。花は1本の花柱の先端が2裂する。花弁などの花被片が無いように見えるが、花柱の基部に子房を包んである。受粉により花被片が果肉のように膨らむ。 雌花

横浜市
港北区
100407
ヤマグワ雌花
実は集合果で、熟すと赤色から黒紫色となる。甘く美味しい。正しくは果肉の部分は花被片の成熟したもので、中の種子が果実(痩果にあたる。
「山の畑の桑の実を、小籠に摘んだはいつの日か」。食べると、口の中が赤くなる。小鳥の好物。


横浜市
港北区
050608
ヤマグワ実
果肉を潰したところ。種子のように見えるのが痩果で、長さ約1mmで小さい。 種子(痩果)

東京都
海の森公園
170527
ヤマグワ冬芽
冬芽は卵形で、少し平たく、先が尖り無毛。芽鱗は4〜7枚で褐色。 冬芽

品川区
林試の森
050325
ヤマグワ冬芽
花芽(雄花)を含む新芽の芽吹き。花序は新しい枝(シュート)の基部から出る。 芽吹き

横浜市
港北区
篠原園地
060406
ヤマグワ冬芽
葉痕は半円形〜逆三角形で、維管束痕がはっきりしている。 葉痕

横浜市
港北区
篠原園地
070108
ヤマグワ葉痕
こぼれ話 「クワバラ」
雷が鳴ると、「クワバラ、クワバラ」と言いながら、物陰に隠れたのはいつごろまでのことだったか。もちろんこのクワバラは、漢字で書くと「桑原」になる。なぜ雷除けのおまじないが「桑原」なのか、二つの説がある。
一つは、大阪府和泉市に、桑原町という地名がある。ここの西福寺というお寺に、「雷井戸」と呼ばれる井戸があるそうで、奈良時代に偉いお坊さんが、雷の鳴ったときに写経をしたら、鳴りやんだと言う言い伝えにちなんだもの。そこで「クワバラ、クワバラ」と唱えると、ここは桑原ですよと、雷さまに伝えるようになった。
もう一つは、桑原は桑の畑の意味で、養蚕盛んなころに、大切な蚕が食べる桑畑には、雷が落ちないと信じられていて、「クワバラ、クワバラ」となったらしい。
日本の各地にもいろいろな説があり、一番目の説に近い話として太宰府で没した菅原道真が有名。道真は天変地異を起こす雷神として恐れられるが、道真の領地であった桑原には雷が落ちなかったためといわれる。
二番目の説に近い言い伝えは九州宮崎県の山里の話。「雷さんが桑の木に落ちたときに、桑の木がねばっこいものだから、雷さんの又に引っかかって取れなくなったそうだ。それからは雷さんは、桑の木に落ちなくなったそうだ。」 これが一番面白く、言い伝えとしての信憑性がありそうな気がする。

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