樹の形

2008年4月25日

今回の自然観察は、前回の樹皮特集を書きながら、思いついたテーマだった。
樹皮に何かが付いている、のではないのだけど、捨てがたい写真もある。
樹の造形である。
樹は特にどうのこうのでなくても、巨樹・巨木になれば、通常その造形に圧倒される。
今回取り上げるのは、巨樹・巨木と言う訳でもないが、変な格好をした樹、程度の話題である。
樹木医は樹の形から、その樹の歩んだ歴史を読み解くのも仕事ではある。
とは言え原因は推測の域を出ず、ほとんどよく分からないのが本音でもある。推測で解説を入れてみたが。
(間違いがありましたらご指摘ください)

初めは、幹の変形です。これは、森の中を歩いていれば、よく目にする風景だけど、
立ち止まって見る人は少ないかもしれない。

@イヌシデのこぶ(七沢森林公園)                         Aコナラ(玉川上水)

B?(菰釣山)                              Cコナラ(七沢森林公園)
@通常、こぶ病は根際か末梢に多い。このように幹の途中にあると目立つ。原因は細菌が多い。
Aこれだけ大きなこぶ状物は珍しい。原因不明。樹は枯れていないので、悪性ではないみたい。
B写真のように膨れた幹を、目にすることは多い。蔓植物が幹を巻き、
締めつけられた鬱血状態が長期(数年〜10数年)に続くとこうなると思う。
葉で作られた栄養の流れがそこで止まり、蓄積されるので、巻きついた蔓の形状に合わせて幹が太る。
C里山にこのような形状のコナラが点々とあった。よく分からないが、萌芽更新を繰り返した跡なのか?

次は、ダンスとヨガとプロレスと。

D樹種不明(大室山)                       Eトウカエデ(篠原園地)

   Fモミとミズメ(天王寺尾根)
D写真が見にくいが、2本の樹が腰を曲げてダンスをしているように見える。右の樹はラクダのようにも見える。
E幹と幹が接触し、強く圧着すると癒合してしまう。輪になった樹。
F2本の樹の間にあるものは、憎しみか愛情か。これまでの歳月の中で、すでに一心同体なのかもしれない。

樹と他の植物との協力でできた造形の妙。

   Gシデの枝とヤドリギ(堂平)                Hサルスベリとキノコ(鎌倉明月院)

Iサクラとヤツデ(篠原園地)
Gヤドリギが寄生した結果、枝が妙に曲がってしまったのだろう。
ヤドリギは寄生といっても、水分だけを横取りし、自分で光合成はする。
ヤドリギの根がシデの養分の流れを止めたため、枝の一部が肥大してしまった。
Iこれが自然の造形なのかは不明。
サルスベリの枝が折れた跡の空洞からキノコが生えてきたところ。
Iサクラの樹の股にヤツデが生えてきた。
写真の上下を変えると、アダムとイブに見えなくもない。・・考えすぎか。

最後に枝葉の造形を。

    K梢の地図(赤谷)                             L空を分け合う(三ケ瀬川)
K樹は太陽の光を奪い合いながら成長する。夏の木漏れ日の中で、梢を見上げてみよう。
樹と樹の間に描かれた、お互いの縄張りの地図が見えてくる。
Lこれは1つの株立ちの樹のシルエットだ。空を半分づつ、分け合っているように見える。

樹の形には、その樹の成長の歴史が表れる。
山の中で、おかしな形の樹に出会ったら、じっくりと樹とお話ししてみるのも面白い。
樹の人生相談であり、打ち明け話をしてくれるかもしれない。

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