ミミガタテンナンショウ

学名 Arisaema limbatum var. limbatum
別名
天南星・虎掌(中)
耳形天南星 分類 サトイモ科テンナンショウ属 (多年草) 有毒植物
仏炎苞の筒口部が耳状に広がっているための名。テンナンショウは漢名の音読み。 APG分類 サトイモ科テンナンショウ属 (多年草)
原産・分布 本州(東北、関東地方)、四国
神奈川県 丹沢、箱根、小仏山地のシイ・カシ帯に分布する。
花の時期 4月〜5月


山野の林内に生える。
本種の特徴として展葉より開花が通常早いので、写真のように花が突き出ている姿を目にする。
仏炎苞は褐紫色〜暗紫色で白い縦筋が入る。独特の形状に伴う名前については、サトイモ科を参照。
テンナンショウの仲間は、地域的なすみ分けを持っているように見える。同じ地域に異なる種が混生していることが少ない。
丹沢石棚山 080517


葉よりわずかに高い位置に仏炎苞がある。
葉は2個で鳥足状複葉になる。小葉は7〜11枚。斑入りの葉になることも多い。
上野原市秋山 110421


仲間でよく似たマムシグサと比べると、こちらの方が背が低く幅広の葉でズングリとした印象である。
また果実の成熟が早く、8月には赤く色づく。マムシグサは、8月はまだ緑色をしており、秋11月に赤くなる。
上野原市秋山 230802


仏炎苞は暗紫色で、筒口部が横に張り出して耳のようになることからついた名。花序の付属体は棒状。
花言葉 「壮大な美」
群馬県みなかみ町 100504


葉と同様に仏炎苞の色も変異がある。
丹沢石棚山 080517


雌雄異株。独特の形状の花序で肉穂花序と呼ばれる。
花の雌雄は仏炎苞の内部を見ないと分からない。花被片は無い。写真は雄花。多数の雄しべからできている。
株が若いときは雄株で、株が年を経て充実して来ると雌株に性転換する。
丹沢檜洞丸 090503


雌花は子房だけが沢山集まってできている。
虫が花粉を運ぶ虫媒花で、臭いでハエなどの虫を誘っている。仏炎苞の中に入った虫は、侵入した上部の開口部からは脱出しづらい。雄花には下に脱出口があるが、雌花に脱出口は無いため、雌花の仏炎苞の中には虫の死骸が多い。写真の花にも入っているのが見える。
群馬県みなかみ町 100504


本種の果実は、仲間の中では最も早く、夏には赤く熟す。マムシグサなど他のテンナンショウの多くの果実は秋11月ころに熟す。
写真はまだ未熟な状態。
上野原市秋山 180709


果実は液果。1つの果実に1〜3個の種子が入っている。
多くは写真のような独特の色づき方をする。先端から順に熟していくことが分かる。緑色から赤に熟し、更に果実が脱落して赤黒い花床までが、1つの果穂の中にみることができる。
果実の利用者(種子散布者)は、ヒヨドリなどの果実食の鳥やアカネズミなどとされている。
上野原市秋山 230801


実が赤く色づいたところ。半分以上脱落している。食べられたのか、自然落下したのかは不明。
上野原市秋山 130818


果肉を水洗いした状態の種子。
白く球形でほぼ3mmの径。
上野原市秋山 230805


春の芽吹き。
葉が見えず、仏炎苞の先だけが伸びてきているように見える。
種子による繁殖が多いが、球茎の周りに小球茎をつくる栄養繁殖もある。写真の2株は種子繁殖と思われる。
丹沢石砂山 190406


球状に大きくなる地下茎に養分を蓄える。球茎と呼ばれる。サトイモと同様に、十分に大きくなった親株の近くに子球茎が作られ栄養繁殖する。
テンナンショウの毒成分は、一般的にシュウ酸カルシウムでこの球茎に多く蓄積される。
上野原市秋山 230803

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