奥秩父入川 金山沢・真の沢

 

1996年6月9日〜13日

20年勤続のお祝いにリフレッシュ休暇がとれた。1週間休んで、以前からゆっくりと釣りたかった入川に入渓した。山中に連続して、4泊もするのは初めてだった。また柳小屋は、良形イワナを釣るベースキャンプとして、当時有名だったため、計画時点から興奮していた。

 

6月9日(曇りのち雨

8:00 自宅スタート−12:00入川管理釣り場(昼食)−14:30赤沢谷出会い−16:30金山沢出会いの下降点−17:30金山沢出会いテン場

今日は金山沢出会いまで着くのが目的なのでゆっくりする。何回か赤沢谷に来て、帰りの管理釣り場までの1時間強のトロッコ道がうんざりしていたので、今回はビールを1缶余計に持ってきて、赤沢谷出会いの木の根の下に隠す。これで帰りの楽しみができた。

 

かつて木材を運び出したトロッコ軌道を行く

 

赤沢谷出会いからの登りはいつものとおりきつい。尾根の乗越しまで1時間ちかくかかり、小休止する。この後は多少のアップダウンはあるが、柳小屋までほぼ等高線にそって行くことになる。柳小屋までの2/3位のところに、金山沢への下降点がある。

下降点から下りは、最初は分かりやすかったが、沢に近づいたところでルートを見失った。と言うより、赤いビニールテープはあるがそのままでは降りれないような崖になってしまった。前後をうろうろしながら降りれるルートを探し、やっと沢筋に降り立った時は1時間くらいたってしまっていた。どうも金山沢より上流に来てしまったと判断し、下流に向かうと出会い口はすぐに見つかった。

出会いの少し広い河原にテントを張ると、本流に竿を出してみた。小雨が降り始めた。当たりがないうちに暗くなり納竿。

夜は寒かった。6月だし標高もそう高くはない、とタカをくくってシェラフを持って来なかった。エアーマットも持っていなかった。地面の冷え込みがそのまま伝わってくるようだった。持っている着る物を全部着て、シェラフカバーにくるまって震えて夜を明かした。

 

6月10日(月)曇りときどき雨

6時前に起床。7時に金山沢に入る。滑床の多い沢で、沢靴のフェルトが薄く怖かった。小雨が降ったり止んだりしている。

イワナの当たりは少なかった。30cm弱を1尾キープしたので、昼飯を食うと13:30にはUターンする。15時に出会いに戻る。本流でもイワナはお留守のようだった。雨は小降りだが降り続いており寒かった。

晩飯はイワナの刺身と、頭と骨の塩コショースープだ。うまかった。山のお恵みに感謝。増水も心配ないようだ。

 

テントサイトにて

 

6月11日(火)曇りのち晴れ

6時起床。ラーメンを食べテントをたたみ8時半に出発。

入川沿いに上がるのが本来だが、慣れぬ沢と思い、一旦山道に上がることにした。濡れたタープやテントでザックが重く、一昨日の下りた道が、3倍くらいの急登に感じられた。登りはルートに悩むことはなかったが、喘ぎ喘ぎ下降点にたどり着いた。

 

金山沢下降点 標識がある

 

10時30分に柳小屋に到着。2人の若者がいて、これから帰るところだと言う。小屋に泊まっているのは別に2人で、不在だった。太陽が出てきたので早速、小屋の前の藪の上に濡れたテントやタープを広げて乾かした。

早めの昼飯を小屋で食べると、試しに股の沢に入ってみた。ここは偶然か魚影が濃く、ゴルジュまでの間に尺足らずを3尾キープしあとはリリースした。3時過ぎには小屋に戻り、刺身と骨酒の準備をすることにした。

そのうちに同宿の2人が戻ってくる。初めに戻ってきた人は、熊谷で自営業をしているらしく、年に一度は10〜20日間店を休んみ、柳小屋を別荘代わりにしているらしい。入川に昔からある山道に精通していて、今は、ほとんど分からなくなっているルートを探し出しては歩いているとか。釣りはしないと言う。なにやら貉か仙人みたいな雰囲気である。晩飯の準備が終わった頃戻ってきたのは、ヒゲをはやしたポパイのようなご仁だった。このポパイはもともと沢屋で、今は東京の郵便局に勤めているが、ときどき仲間を連れて騒ぎにくるとか。滝の写真を撮ることを今の趣味にしているようだ。真の沢には良い滝が沢山ある、と言いながら、撮った時のデータを整理していた。

小屋に置いてあるボロ毛布にくるまりながら、ろうそくの光の中で二人の話を聞いている時間が楽しかった。

 

6月12日(水)曇りときどき晴れ

今日は真の沢を釣り登った。小屋より上の真の沢は、千丈の滝までが一つの区切りである。この区間が入川のイワナ釣りの憧れのポイントでもある。大きな滝は2カ所あるが、巻き道ははっきりしていて難儀することはない。7時に小屋をスタートして、14時に千丈の滝まで来たが釣果は0だった。おまけに昼食のための火をつける、ライタを忘れてきてしまいスパゲティも食べられなかった。

 

身を潜めて

 

途中の滝にて

 

こうなったら意地である。千丈の滝の上を釣ってみることにした。滝の上に出るには大きく高巻き、真の沢林道まで上がる必要がある。どこの滝もそうだが、大きな滝の上は一旦ゆるやかな流れが続く。30分くらいで木賊谷の出会いになる。ここまで来ても当たりは出なかった。あきらめて帰途に着く。帰りは真の沢林道をひたすら降りると、約1時間で柳小屋に着いた。

遅れて昨日のポパイが帰ってきた。千丈の滝のさらに上流に、不動の滝、駒鳥の滝、滑滝などの写真になる滝があり、そこに行ってきたと言う。帰りに釣った、と言う尺イワナ4〜5匹をビニール袋から出しながら、「どうでした?」と聞いてきた。

 

6月13日(木)曇りときどき晴れ

今日は午前中だけの雪辱戦だ。ポパイのアドバイスに従い、真の沢林道で一気に千丈の滝上に登り、さらに木賊谷出会いを通り過ぎ、最初のゴルジュから竿を出すことにした。6時に小屋を出て7時に滝上、8時にその最初のゴルジュに着いた。コーヒーを飲んで一休みしながら、心は先を急いでいた。

しかし、期待した良形は出ない。ポパイが昨日尺を上げたと言う、堰堤の滝の滝壺を丹念に探るが当たりはない。その上の流れがゆるやかになったところの、小さな落ち込みでやっと尺が来た。それだけだった。心残りだが今日はここまでとした。

昼飯を食べ、下降を開始する。真の沢林道をたどり、14時に柳小屋に着いた。ポパイが荷物をまとめて小屋を出ていくところだった。しばしの会話と別れ。

 

真の沢林道への橋(今は立派な吊り橋になっている)

 

柳小屋の前にて(小屋も今は立派なログハウスだ)

 

15時小屋を出発、17:30分赤沢谷出会い。木の根の下からビールを探し出す。正解だった。燃料を補給しながら、19時に管理釣り場横の駐車スペースに着く。

 

(2004.02.02)

 

 

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