新潟三面川(泥又川)紀行

1997年7月18日〜7月22日

7月18日(金) 晴れ

2:00  起床

2:30  O氏を自宅で拾う

4:00  東北自動車道 上河内SAで朝食

7:00  国見IC 米沢〜小国で朝のラッシュ

9:00  小国 三面へ向かう県道に入る 奥三面ダム工事で迂回路

10:30 猿田ダム入り口

11:30 石黒沢出会い駐車場 支度をし猿田川を渡り、小沢を登る

15:00 泥又川 テントサイト

16:30 晩飯準備

20:00 就寝

 

泥又川に入るルートは事前に3本を想定していた。一番下流は、猿田湖の回りを周遊する山道が、手元の本には書いてあった。2番目は石黒沢の向かいの小沢を登り泥又川の中程に降りるルート。3つ目は戸立沢から入るゼンマイ採りのルートである。そのうち1番目のルートが嘘だった。一番したから入ろうとしたが、湖の周囲には山道も踏分け道もなかった。普通のダム湖と同じで、回りは全て湖面の上に切り立っていた。ダムの管理棟の草刈りをしていた人に尋ねたが、そんな道は知らないとのことだった。

石黒沢の向かいの小沢はすぐに分かり、登るのも楽だった。もともと細流だったが、ガレ場から湧き出る豊かな水源まではすぐだった。尾根まで上がると、尾根沿いに歩くことが結構大変なのでそのまま泥又側に降り始める。初めは、尾根も谷もはっきりしない地形だったが、谷がわかると谷筋に降りる。O氏がここで腰にぶら下げていたビールと食料を落とす。

谷は、最後に小さな滝になって泥又川に流れ込んでいた。滝を迂回するのに手こずり眼鏡を水中に落とし焦ったが、すぐに見つかる。念願の泥叉川だ。O氏が先に行き、頭から水浴びをしている。

 

早速、二人で竿を出してみる。事前情報では、猿田湖からの遡上イワナが、尺を越えるイワナがビンビンかかるはずである。お互いにポイントを決めると、震える手で支度をして仕掛けを投げる。糸は虚しく目の前を流れていく。まあ、第一投からは来ないだろう、と気を取り直し再び上流へ投げる。これも空振り。何度やっても空振り。場所を移動して再びさぐる、が何の当たりも無い。O氏もどうも同じようだ。

結局、事前情報は単なる法螺話だったか、と諦めるが、しばらく渓流釣りの気分を味わう。これは後で分かったことだが、泥又川の遡上イワナは、いつもいる訳ではなく6月のある時期(数日間)だけ、猿田湖から上流の大明神滝までの間を群れを成して遡上するとか。本当に50cmを越えるイワナがワイワイと登っていくらしい。その数日間を予測して出かけ、当たれば本当の幸せ者だろう。

入渓点の少し上の河原をテントサイトとする。

 

7月19日(土)晴れ

5:30  起床

7:00  スタート

12:00 大明神滝 昼食 滝を釣る

14:00 下る

16:00 テントサイト

 

今日は大明神滝下の泥又川を十分に遊ぶことにする。

大明神滝まで釣り上り、また降りてきた。釣果は散々だった。釣り人には何人もすれちがった。皆さん、猿田湖をボートで渡り河口から登ってくるとのこと。だから山釣りの出で立ちでない人が多い、ルアーマン、フライマンが胴長の長靴姿で川岸を歩いてくる。皆さん「釣れない」と言う。誰もが大明神滝までが限界だと言う。大明神滝の越えかたが難しいらしい。我々は明日、そこを越えようとしている。大丈夫だろうか。

二人連れが、竿を出さずに追いついてきた。山越えで泥又に入ったが、すぐにテントがあったので下流での釣りを諦め、滝より上の二俣まで行くという。山越えは1時間半で越えたらしい。我々が3時間掛かった、というと、そんなことでは大明神滝は越えられないな、と脅かして行く。

泥又川は豊かな川だった。緑も豊かだし、水も豊かだ。岩魚さえいれば・・

轟音の中の静寂

暑さの中で

大明神滝

 

7月20日(日)晴れ

5:30  起床

8:00  スタート

10:00 大明神滝 この滝を越えるのに苦労する 結局大きく高巻き支流に降りる

14:30 支流(グロザエモン沢)下降

17:30 グロザエモン沢途中でビバーク

 

今日は、大明神滝上流の二俣まで行けばOK。1日かけて大明神滝を越えるつもりでいた。しかし、先行した二人に言われたように、大明神越えが想像以上に大変だった。とくに岩登りの技術を持たない我々にとって。

滝を越えるルートは多分3つなのだと思う。

一つは滝壺を越えるルート。これは登攀具が必要。滝壺の右側の壁にハーケンがいくつか打ってありそれを使うと良いようだ。我々はザイルもカラビナも無いのでどうすることもできなかった。

第二が、滝壺の右岸の上の方をトラバースするルート。これは空身ならいざしらず、重いザックを背負って越える自信が無かった。誰か目の前で手本でも見せてくれれば、ある程度安心できるのかもしれない。それがルートだと言う確信も無い状態で、岩壁にへばりついて身をさらすのは度胸がいる。

3が右岸の小尾根高巻きルート。これも尾根の上に上がってみたが、向こう側に降りるのにはザイルが必要だ。

初めのうちは、滝壺に入って向こう側の岩にある凹みの上によじ登れないか試したり、したが滝壺が微妙に深く体を押し上げることができない。そのうちに体が冷えてくる。

最後には、上の3つのルートを諦めて、時間がかかることを覚悟で大きく高巻くことにした。少し下流に戻り、小さなルンゼを無理やり登って行き尾根に出る。ナタ目もあり多少安心する。多少上がりすぎたところで、今度は涸沢を降り始める。小沢は涸れたままグロザエモン沢に滝となって合流していた。今度はグロザエモン沢を降り始めるが、すでに体力は限界だった。川岸に小さなスペースを見つけるとそこにビバークすることにした。

いや、お疲れさまでした

 

7月21日(月)晴れ

5:30  起床

7:30  スタート

9:30  本流へ

13:00 二俣

14:00 上流へ

16:30 最後の晩餐

 

グロザエモン沢は小さな沢で、下降は何の障害も無かった。本流合流手前で20m程の滝となっていた。右岸小沢から巻くと降り口にリボンがあり、ナタ目もしっかりついていた。やっと本流に戻ってきた。期待して竿を出すが、岩魚は下流と同様にお留守だった。O氏が8寸くらいのを上げ、むりやり刺身にして昼のおかずにする。

正直言って、二俣より上については、ゼンマイ道もあることから釣り人も多いことが予想され、ほとんど期待はしていなかった。初めて、新潟まではるばるやってきたが、有名な沢はどこも同じだな、というのが残念ながらの感想になりつつあった。かなり、ここまでの苦難の道の疲労がたまってきているようだった。

突然、沢が二手に分かれていた。ほとんど同量の水量だが、右岸に支流が流れ込んでいるようにも見えた。なるほどここが二俣だ、と思い右岸の段丘の上に上がると広めのテントサイトがあった。昔のゼンマイ小屋後だ。焚き火の後がまだ暖かく、多分朝まで人がいたのだろう。先日の二人連れか。

テントを設営すると、早速竿を持って沢に下りる。僕が東俣沢、O氏が西俣沢に入った。

驚いたことに、大きな淀みでは必ず当たりがあった。すぐに持ってきた餌がなくなったので、最大9寸を上げ、意気揚々と引き返す。O氏はあまり当たりが出ないのと体調がすぐれず早々に引き上げてきたとのこと。多分、今朝までいた二人連れが昨日西俣沢に入ったのだろう。

岩魚は全てを食べた、マリネにし、岩魚汁にし、骨酒にした。真っ暗になると巨大なホタルが飛んだ。何となく最後の夜で満足できた。山の神に感謝。

二俣:左から西俣沢が流れ込んでいる

東俣沢のイワナ(ニッコウイワナ)

 

7月22日(火)晴れ

4:30  起床

6:20  スタート ゼンマイ道の山越え

7:40  ピークを越える

11:00 猿田川に

12:00 駐車場

20:30 自宅

 

ゼンマイ道とはどんな道なのか、多少は覚悟してとりついた。

登り初めが急だった。崖を、木の幹や根っこを頼りによじ登っている状態だ。もちろんルートなど分からない。少なくとも登り初めのポイントは正しくて、上に登っていれば正しい尾根に出るだろうという読みだ。両腕で体を押し上げるから全身が疲れる。10分もしないうちに汗だくになる。尾根状のつん立ちで小休止する。朝日が当たりさらに暑くなってくる。明白な尾根筋の傾斜の場合は、踏み分けの道がよく分かるが、凹凸があったり、広い斜面がどこもルートだったりすると道は分からなくなり、幾度か間違えて別の尾根筋に行きそうになることもあった。

ピークを越すと今度は下り傾斜が続く。大分標高がさがり猿田川まであと少しのところで、道は左に曲がり側面を一気に下りていく様子となる。あまり悩まず道なりに行く。がすぐに道は曖昧になり、倒木やらガレ場が道をふさぎ、あたりを見回しながらの下降が続く。そのうち急傾斜を湧き水の流れる草地となり、ともかく下へ下へと急ぐ。目の前に猿田川の流れが現れて、山越えの終わりを知る。猿田川へ滴り落ちる湧き水を思い切り飲むと、川のなかに頭を沈め熱気を冷ました。

ゼンマイ道は、どちらから登っても、登り初めと、最後の下降ルートがとても分かりにくい気がする。尾根に出てしまえば踏み跡は割としっかりしており迷うことは無いと思う。つまり、それ程には利用されていないのかも知れない。二俣より上の魚影の濃さはそのせいなのかもしれない。

この時期、猿田川、泥又川はアブがすごいと聞くが、泥又川では全くあわなかった。猿田川では、駐車場までの林道を歩く間、汗くさい二人に大分しつこくつきまとっていた。

ゼンマイ道山越え

ゼンマイ道にて

再び猿田川

 

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