樹木の診療記録
樹齢100年のサルスベリ

樹医修行中の先輩である、TGさんのお客さんの庭木です。
川崎市の住宅地にある、樹齢100年のサルスベリの治療を、、一緒にさせていただいた。

肩の近くで3つの幹に別れていて、その下での目通りは100cmある。
主となる幹(A)は約4mの高さまで上に伸び、他の2つの幹はそれぞれ東(C)と南(B)の方角に横に張り出している。
3つの幹にそれぞれ枯れがはいっていた。幹Aは浅い表面の枯れだが、横に伸びたB、Cは枯れの状態が進んでいた。
事前の予測では、日焼けが原因の枯れで、それほど腐朽は深くなく、
腐朽部を取り除いて表面を樹脂などで保護しておけば、とりあえずは大丈夫だろうと考えていた。
サルスベリの樹皮は薄く、カルスの盛り上がりを期待できるのかは、見た感じとして疑問だった。

腐朽部の取り除き処理をしていると、幹B、Cは腐朽が予想以上に進んでいた。
生きている樹皮と形成層を残して、ほとんどの木質部を取り除く感じになる。
作業的にも大変なので、今回は取り除き処理を取り止めた。腐朽部を残したまま漆喰で蓋をし、表面を樹脂コーティングした。

また、穿孔虫(テッポウムシ)の害があった。
枯損部には虫食いの跡が、健全部にはまだ食害虫の穿孔虫がいた。
テッポウムシは一次性の穿孔虫であることが分かる。シロスジカミキリかと思われる。

2004年4月14(水)曇のち雨 〜 15日(木)晴れ
幹C。日の当たる面が枝分かれ部まで枯れている。
幹Aの枯損部の表面を削り取っている。
幹B。傷は深く、腐朽部を取り除くと、健全部の表皮だけになってしまいそう。
幹Bの内部。白色腐朽菌が広がり、腐朽菌の菌糸が白く見える。
Cの処理。腐朽が深く、腐朽部の取り除きを中止する。
幹A。穿孔虫の食痕。緑色が形成層。
食事中のテッポウムシ。顎が発達している。
大きな穴には漆喰を詰めた。さらに全体を特殊な樹脂でコーティングして完了。
全木。傷部に殺菌剤(トップジンM)を塗る。

 

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