樹木の診療記録
保井寺の五色ツバキ

日本樹木保護協会の、樹医1級実習の現場です。

八王子市の南、堀之内に保井寺(ほうせいじ)と言うお寺がある。
新撰組の、斎藤一諾斎(斎藤一ではない)の墓があるお寺で、多摩近郊は新撰組に縁がある。
ここに五色の花の咲く椿がある。樹齢数百年(メモを忘れた)の、立派な椿で、幹周りは2m近くある。
地上1mで、幹は2つに別れ、大きな樹冠を作っていたようだ。残念ながら、その片方が枯れてしまっている。
元の姿は想像するしかなく、惜しまれる。

2005年9月26日(月)曇のち晴れ 〜 29日(木)晴れ
山門を入って左手にある。日本一の五色椿となっている。写真右はカヤの木で、枯れてしまった幹は、カヤの向こう側に、枝を張っていたらしい。残った樹冠は、半分なのだろうが、それでも大きい。
残った幹の枝も、傷みがあるので修復作業中。下に大きく口を開けているのが、枯れた幹の分岐部分。樹皮や傷部は清掃済み。

枯れの原因は、深植えのようだ。元は法面に、かつて、山門の高さまで、盛り土をしてしまったと言う。西側の幹が枯れてしまうと、残った幹に西日が当たるようになり、幹ヤケが生じたように思えた。
深植の程度と、根の状況を見るため、植え際を掘り起こす。スコップでの試掘後、機械で慎重に掘る。
左から右に傾斜した法面だったと思われる。右側が50cm以上の深植えになっている。土中になった幹は腐っている。地際からは、新しい根が生えてきている。

新しい根を生かすことにし、深植えの土は、取り除かない方針となる。
幹の腐朽部を取り除くと、幹の分岐部の穴まで、連続した空洞ができていた。一方根回りは、土壌改良のために、丁寧に堀り上げる。
大きく口を開けた腐朽部は、見た目の改善と、患部の保護のため、モルタルで閉塞する。山本先生による処置が進む。
土壌改良も、樹冠の下のエリアを分割して、各区画ごと順番に実施した。
閉塞完了。周辺部は、カルスの再生を促すように、精密に処理されている。
閉塞部に幹と同色の化粧をし、支柱を新しく立て、土の表面にバークをマルチングして完了。
これでしばらく様子を見ることにする。
2006年4月28日(金)晴れ
半年後、様子を見に行くと、見事に花が咲いていた。住職の話では、例年より花は多いとのこと。

土壌改良で根をいじめているので、梢の方は、葉が落ちていた。今年の新芽で、挽回してくれることを期待する。

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