ウバメガシ |
学名 | Quercus phillyraeoides |
別名 | ウバメ、イマメガシ、ウマメガシ、バベ | |
姥目樫 | 分類 | ブナ科コナラ属 (常緑低木〜亜高木) |
若葉が褐色であることを、老女にみたてた名。 | 原産・分布 | 本州(千葉県以西)太平洋側、四国、九州、沖縄。朝鮮(済州島)、中国。 |
神奈川県 | 自生は三浦半島の海岸近くのもの。丘陵地は逸出か。 | |
用途 | 庭木、薪炭 | |
暖地の、海岸近くの山地に多く生える。単木で育てば15mを越える高木になるが、生育環境により通常は5m前後の低木になる。よく枝分かれして繁るため、生垣として使われる。 分布の北東限が、房総半島の南端の鋸南町岩井袋であることが、最近確認された。 |
樹 東京都 海の森 151114 |
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太くなったウバメガシの樹皮は、黒褐色で縦に裂ける。成長が遅いため材は堅く、良質な木炭(下「こぼれ話」参照)になる。 | 幹 横浜市 岸根公園 (植栽) 030126 |
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葉は互生し、葉身は楕円形。縁は、上半分に鋸歯がある。革質でややかたく、表面は光沢がある。 | 葉 横浜市 岸根公園 030126 |
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雌雄同株、雌雄異花。 4〜5月に、本年枝の下部に雄花序を垂らす。 |
雄花 横浜市 港北区 060426 |
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雌花序は、本年枝の上部に1〜2個つく。1つの花序に通常2つの雌花が付く。 | 雌花 横浜市 港北区 060426 |
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ウバメガシの堅果は2年目の秋に熟す。殻斗は浅い杯状で、瓦状に総苞片が並ぶ。堅果は、果柄に2個づつ付く。 | 実 横浜市 鶴見区 (植栽) 031017 |
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コナラの仲間は、枝の先端に複数の頂芽をつける。春に一斉に芽吹くため、枝数が多くなる。 | 新芽 横浜市 鶴見区 (植栽) 030406 |
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こぼれ話 「白炭(備長炭)」 木炭にはその焼き方により白炭(しろずみ)と黒炭(くろずみ)とがある。その2つは炭窯の構造、焼く工程、焼く温度、焼き上がった炭の性質、さらにはその炭焼きをする人の生活までが異なるという大きな違いがある。 白炭について以下黒炭と比較した特徴を簡単にまとめてみた。 白炭は、黒炭より高温(1000℃以上)で木材を炭化させる。そのために窯は熱に耐え保熱性の良い石を組み上げて作られる。一般に川石は爆(は)ぜる、山石を使う、とされている。黒炭は低温(600℃前後)のため粘土で窯を作る。白炭は石窯(いしがま)、黒炭は土窯(つちがま)で焼くと言われる理由だ。 高温で焼かれた炭は樹脂成分がほとんど気化し、組成がほぼ炭素のみになる。そのために炭の性質としては、燃焼するときに高温になり二酸化炭素以外の燃焼ガスを発生しない、着火はしにくいが一部に火がつけばすぐに全体が燃焼する、水分やにおいを吸収しやすく、長期保存には向かない、などの特徴がある。 高温で焼くためには石窯の温度を下げないようにして、次々に焼くのが効率が良い。そのために焼き上がった炭を窯の外に出すと、窯の温度が下がらないうちに次の炭材を窯に入れるという連続工程が一般に行われている。熱い窯の中に次の炭材を入れるのは非常に重労働である。長い刺股(さすまた)を使って一本一本窯の中に炭材を立てかけていく。立てかけられた炭材は窯の熱で自然発火する。 窯が高温を維持している限り、毎日繰り返し炭焼き作業を行うのが白炭である。一方の黒炭は炭化が完了すると一旦窯の口を絞めて空気を遮断し、窯が冷えるのを待ち炭を取り出す。炭を取り出してから次の炭焼きは自分の都合で調整できる。従って白炭焼きは炭焼き専業の産業であるが、黒炭焼きは農家の兼業でできる。 炭の需要が多かった戦後しばらくは、山に入ると専業の白炭焼きが山のあちこちで行われていたそうだ。最盛期は昭和32年頃で約200万立米の炭材が伐採されていた。 写真は白炭焼き。最後の仕上げに窯の口を大きく開け空気を送り込む。熱い炭はより高温になり炭化を完了させる。そのまま真っ赤な炭を掻き出し、土と灰を混ぜた消粉をかぶせて空気を絶ち消火、冷却する。冷めた炭は灰を被り白く見えるので白炭と呼ばれた。→「炭焼き体験」 白炭に向いているされるのが材が固いウバメガシなどのカシ類である。ウバメガシが自生する紀州で独特の製法で作られた白炭が紀州備長炭と呼ばれている。和歌山県木炭協働組合の登録商標である。鋼のように固く、打ち合わせるとキンキンと金属音がすることで有名である。紀州備長炭の材料はウバメガシだけではない、念のため。また備長炭という名前は、江戸時代の紀州田辺の炭問屋(備中屋長左衛門)からだそうだ。 |