ネムノキ | 学名 | Albizzia julibrissin |
別名 | ネブノキ、カウカギ、コウカ、ネムタ、ネブタノキ、ネブリ 合歓(中) |
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合歓の木 | 分類 | マメ科ネムノキ属 (落葉高木) |
展葉が5月で遅いことから、あるいは夕方になると、葉が閉じることから。漢名の「合歓」は、葉が合わさることから。 | 原産・分布 | 本州、四国、九州、沖縄、朝鮮、中国 |
神奈川県 | 山地の上部を除き、全域に広く分布。 | |
用途 | 庭木、器具材 | |
丘陵地、日当たりの良い山地、林縁、土手に生える先駆種。 山腹に生えた樹。幹は枝分かれして横に長く伸びてやや枝垂れる。花の時期にはピンクの綿を樹冠に載せたように見える。 荒地でもよく生え育つ理由に根粒菌との共生も挙げられる。 |
花樹 上野原市 秋山 150720 |
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樹皮は灰褐色で、褐色の皮目がある。材は柔らかく脆い。 | 幹 厚木市 自然保全センター 040821 |
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葉は互生し、大型の偶数2回羽状複葉となる。羽片は対生し5〜15対、小葉は対生して18〜29対ある。小葉は包丁の形で、全縁、無柄。 夕方になると、小葉が閉じて垂れ下がるのは、夜は光合成を行わないので、葉は不要になるため。 ★食★キチョウ、ネムスガ |
葉 丹沢 水の木 040718 |
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花が美しいため庭木としても植えられる。また勝手に生えてくることが多く、畑の隅や道路脇に切られずに大きくなった木もある。 花は6〜7月に、枝先に頭状花序を2〜数個、総状につける。頭状花序には10〜20個の花がある。花弁は8mmほど、雄しべの花糸が淡紅色で3〜4cmと長く目立つ。 |
花・葉 横浜市 港北区 (植栽) 040618 |
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花は、葉の開閉と異なり、夕方開き、朝には萎む。葉が夜に閉じるのは、闇の中で、この花を目立たせるためのようだ。 夜行性の花粉媒介者(ポリネータ)スズメガを呼ぶためで、スズメガは3cm以上ある口で、頭状花序の中の蜜を吸う。 花言葉「歓喜、創造力、胸のときめき」など。 ★蜜★スズメガ |
花 丹沢 水の木 040718 |
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豆果は10月に熟し、10〜13cmで10〜15個の種子(5〜9mm)が入る。 鞘の割りに種子は小さい。先駆種でもあり風散布と考えられている。 樹上で乾燥すると鞘のまま風に飛ばされる。 |
実 丹沢 丹沢湖 041016 |
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葉柄の基部が少し膨らみ、来春に向けての冬芽が見えない。下の葉痕の写真で見るように、冬芽は春になるまで姿を見せない。葉柄内芽の一種。 | 葉柄 上野原市 秋山 150722 |
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冬芽は葉痕の下に隠れていて冬期は見えない。葉痕の上に見える副芽は、半円状またはイボ状で芽鱗の識別は難しい。 葉痕は三角形またはハート形で、維管束痕が3つある。写真の葉痕のハの字の筋は維管束痕の境の割れ目。 |
冬芽、葉痕 藤沢市 六会 090317 |
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名前の語源の通り、関東近辺の森では一番遅い目覚めではないだろうか。他の木々は既に葉を広げている中で、葉の無いネムノキは枯れた木に見える。 | 芽吹き 上野原市 秋山 160502 |
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こぼれ話 「ねぶた祭り」 ネムノキは北海道を除く各地の山野に自生し、花の美しさや夜に葉を閉じる習性などから人との関わりが強かったと思われる。そのためか「別名」欄にあるように、地方名が数多くある。そのほとんどが「眠り」に関する名前である。 柳田國男の「年中行事覚書」に、日本の各地に伝わる「眠流し」の行事について述べられている。夏の暑いさなかの労働で眠気(睡魔)を忌み嫌い、ネムノキと一緒に流し去る風習が各地にあった。多くは七夕(たなばた)の朝に水浴びをすると早起きできるようになる、病気にならないなどの言い伝えがある。この際に「ネブタ流れろ、豆の葉とまれ」というような掛け声を唱えることが多い、とされている。 東北地方の各地に伝わるねぶた(ねぷた)祭りの起源として定説となっているのがこの「眠流し」の行事である。七夕や盂蘭盆の行事としての精霊流しや盆灯籠などと一緒になり、地域ごとに特徴のある大灯籠になったとされている。旧暦の七夕は新暦の8月であり、観光の意味では夏休みの方が良いということもあり現在は七夕祭りとは別のイベントになっている。 ねぶた祭りの名前の語源としては、ネムノキを川に流すことを、ネムノキの地方名から「ネブタ流し」と呼び「ねぶた祭り」となったのか、逆に眠流しの行事からそこで流されるネムノキがネブタなどの行事の名で呼ばれるようになったのかは分からない。どちらにしろ「ねぶた祭り」を「眠流し」に起源をもとめると、ネムノキと「ねぶた祭り」とには深い関係があることになる。 一方、この柳田國男の眠流し起源説には異論もある(「ねぶた由来記」)。「ねぶた」とはアイヌ語を起源とし、ネプとは「何」の意で、忌嫌うものを指す代名詞として使われている。「ねぷた流し」とは「あれを流す」で、病魔や穢れを流すのニュアンスだとされる。この説ではネムノキの出番はなくなるのでこのカラムでは紹介だけにする。 写真上は弘前の扇ねぷた、下は五所川原の立ねぶた。どちらも勇壮であり睡魔を避けるという意味としては大げさとも言える。 |