杉の枝打ち研究(3)
若い木では、深く切り取る枝打ちがBest

2009年3月29日

3年ぶりに「水の木」の活動に参加し、懸案だった枝打ち痕の巻き込み状態の写真を撮った。枝打ち後、通算で5年経っている。それぞれの切り口がどうなっているのか、興味津々ではあったが、現場では過去の写真と比べられないので、変化が分からなかった。家に帰り、切り口ごとに写真を並べると、ナルホドなるほど。まずは以下に全ての写真を掲載する。
結論からいうと、今回の枝打ち痕の5年間の変化だけを見ると、深切りによる枝打ちがもっとも傷口の回復が早いことになる。ただし前提として、この林分のスギは若く、枝打ち時点で16年生(つまり今年で21年生)である。若いスギは傷口組織の回復が早いとも言われる。40年生のスギでも同じかどうかは分からない。
しかし実際問題として枝打ちは若い木に対して行うことが多い。特にボランティアによる枝打ちは、若い木でないと技術的に難しい。だから、下手に枝を残すよりは、えぐるように切り取る方法の方が、林業体験などの指導では間違いが無いと思う。

今後も、今回の枝打ち痕の追跡を行いながら、夏の枝打ちの功罪も調べてみたいと思っている。

 

2004年4月29日 2005年6月19日 2006年3月19日 2009年3月21日 備考
浅切り口

枝の一部を残して切る
写真では暗くて見にくいが、どの切り口も5年間では塞がることができていない。1年目で、傷口組織が盛り上がりを見せるが、切り残された枝を乗り越えられず、コルク質になってささくれ立っている。

さらに時間が経過すれば、樹皮が切り口以上の高さに成長し、覆い隠すのか興味がある。

たとえ将来節が隠れても、材にすると心材に近いところに死節があるので、枝打ちをしていない材と同じになる。
(写真撮り損ね)
適切

ブランチカラーに合わせて切る
2B2と2B3を除いて09年には100%塞がっている。しかし、傷口組織の展開は遅く、2年間では30〜40%しか塞がっていないように見える。
2B2は切り口の形状から、分類間違えのような気がする。Aタイプ(浅切り)である。従って、09年にも塞がらず、傷口組織が周りにささくれ立っている。
2B3は09年になっても切り口の40%くらいしか覆われていない。傷口組織の展開がなぜか遅い。
(写真撮り損ね)
(写真撮り損ね)
深切り口

樹皮もえぐりとる
深切りの場合は、思いの外傷口組織の展開が早い。特に1C1、1C2、1C3は傷口の面積の60〜70%が2年目で覆われている。写真からも傷口組織の盛り上がりの早さが分かる。
2の調査木は5年目でようやく塞がってきている。こちらの木の方が傷口組織の展開が遅いという特性があるのかもしれない。
傷口の閉塞は早いが、傷口が大きいだけに、腐朽菌に侵される確率は高くなるのかもしれない。
乱れ切り

斜め、V字などいろいろ
このグループは、上記のA、B、Cタイプの組み合わせ応用編である。切り残しが高い部分が塞がらず、低い部分から傷口組織が盛り上がるのが分かる。

 

 

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