就職はしたものの

 

鶴見の技術校を、修了する前年の暮れにK園でアルバイトをした。

K園は個人邸中心の植木屋だ。1期前の先輩の紹介で、学校修了後の就職を含めてお願いしていた。

K園の朝は。8時集合なので割とゆったりしていた。現場がほとんど近くだからかもしれない。

7時40分を過ぎると職人さんが集まり始める。

5〜6人が集まると2人、3人の組みになって、それぞれの現場に出かけて行った。

職人さんは自分の顧客を持ちながら、手が空いているときにK園に手伝いに来る人もいたようだ。

この年の暮れは、インフルエンザの微熱の中、29日までバイトした。

 

年が明けて、何だかんだしているうちに2月の終わりになり、K園に就職の確認の電話を入れると、

暇だ、来ても仕事が無いよ、と断られてしまった。

この時は、焦った。翌日からハローワークに通い、結果は今のS造園に就職することになる。

まわりの人の話を聞いても、個人邸中心の植木屋は経験者を募集し、

公共工事中心の造園会社は若者を募集していた。

初心者の中高年は、就職先がなかった。

 

造園業界についていろいろ書こうとしている。経験はまだ1年もない。

当然、独断と浅い偏見が満ちていると思う。適当に手加減しながら読んでいただきたい。

 

造園業は個人邸中心か公共事業中心、という分け方は一番分かりやすいと思う。

個人邸中心の会社?は、会社ではなく個人事業の形態が多く、

公共事業中心の会社は、役所への入札上、有限か株式の形態をとった会社が多い。

その結果、前者は各種保険全く無しが多く、後者は雇用、労災、健康など保険もそれなりに揃っている。

経営形態も、前者は個人か家族中心、後者は小さいけれども会社組織になる。

 

どちらが良いかは、好き好きだろう。

職人に憧れるなら個人邸系だ。今だと70歳近い頑固な職人が何人かいて新人をいじめる。

さっぱりと働きたいなら公共事業系だ。草刈りとゴミ掃除を1年経験して、現場代理人に出世できる。

僕もそうだがサラリーマンを辞めた人には、公共事業系は馴染みやすいが面白みがないのではないか。

 

個人邸系に就職した人は、腕が上がるかお客に馴染ができると、慢心して独立してしまう。

公共事業系に就職した人は、面白くないか、体力が続かず会社を辞めていく。

どちらにしても人材の流動性の高い業界のようで、数年で移動していく人が多いようだ。

かく言う自分もそうだが。

 

昔(バブルの頃)は造園業の名の通り、「造園」の仕事が多く面白かったようだ。

技術校で学んだような、竹垣や蹲、庭石などいろいろ変化のある作業であり、創造性もある。

最近は、日本庭園ではなくガーデニングの領域で「造園」があるようだ。

僕の先輩で、この「造園」をやりたくて造園業界にいる人がいる。

ただし、仕事としてそんなに多いわけではない。

 

造園業界は、小さい会社が多いことと斜陽と見られているせいもあって旧態依然である。

屋上緑化やビオトープ、植生復元、樹木治療などこれからの技術は、大手の土木業者が中心になっている。

本当は、樹木の幹、枝、葉、根を毎日見ている植木屋が、

これからの緑に関する仕事をしていかなければならないと思うが、未だに腰の物がすべての植木屋が多い。

 

樹木治療の勉強と仕事をしたくていろいろ調べた。その時は一番近いのが植木屋(造園業)だと思った。

しかし、就職して1年ほどしたが、大分違うかなという気がしている。

結局、今の日本には英・米国でいうArboriculture(育樹学、樹芸学)の職業領域が曖昧で、

樹木医とか樹医という資格だけがある。当然、業界のようなものも無い。

 

しばらくは樹木治療の現場をさがしながら、植木屋さんの中で糊口をしのいでいくことになりそうだ。

 

(2004.1.7)