県立高等職業技術校(訓練内容)

 

技術校のカリキュラムについては前回紹介したように、概ね以下の内容だ。

・樹木管理(剪定、移殖、支柱、防除)

・庭石(景石、つくばい、飛び石、延段、石の運搬)

・竹垣(四目垣、建仁寺垣、金閣寺その他)

・外構工事(ブロック、レンガ、タイル、鉄平石)

造園設計(積算、設計、製図)

庭園見学

総合演習(技能展)

 

鶴見のエクステリアサービスコースは、樹木管理(剪定作業)に重点を置いたカリキュラムになっていた。

校内の樹木剪定実習を含め、年間8回の(校外)実習が組まれていた。

30人もの見習い庭師が同じところに何回も行くと、そこが禿山になってしまうので、毎回場所を変える。

県立の諸施設の樹木剪定を練習させてもらい、その施設の運営予算削減に寄与していた。

 

初めは校内の植木でもって剪定の基本を練習する。5月だった。先生は遠藤先生。

木製の脚立に登り、あるいは幹に乗り、おっかなびっくり枝を切る。

どこで切るかの理屈は分かっていても、実際の枝を前にすると鋏が動かなくなる。

樹の種類が変わると枝振りが変わり、また分からなくなる。

気が弱い人は剪定前とあまり変わらないし、思い切りが良い人はほとんど丸坊主にしてしまう。

 

 

鶴見スカイハイツ、精神保健福祉センター、川崎職業技術校、産業短期大学(3回)、栄養短期大学

のそれぞれの木樹たちにお世話になった。

高所記録は8m程のユリノキ、剪定本数記録はマテバシイ(本数不明)、長時間記録は4m程のクロマツ

鶴見スカイハイツでは、休憩時間のフルーツや茶菓子がとても嬉しく楽しみだった。

2月の栄養短期大学では、寒い雨の日の作業に手や足の指が痺れた。

 

入校してすぐに始まったのが竹垣制作だった。四目垣と建仁寺垣を制作した。

手が自然と動くようになれと言われ、竹と竹を結わく棕櫚縄の結び方を何回も練習した。

1日が終わると指が真っ黒になり、人指し指の関節でひび割れている。

その他の竹垣は、その後の復習の時間に、見よう見まねで各自気に入ったものを練習していた。

 

 

樹木管理の次に時間が多いのは外構工事で、セメントを使った作業をいろいろと練習した。

もちろん本物のセメントでは、練習が終わるたびに廃棄物が山のように出るので使えない。

石灰を砂と混ぜて練ったものを疑似モルタルとして、ブロックやレンガ積みに使った。

本物のモルタルに比べ、見た目の雰囲気はそっくりだが粘りが無く、当然凝固もしないので崩れ易い。

壁タイルだけは疑似モルでは作業ができないので本物を使った。

 

 

タイルや鉄平石は、ちょうど7月〜8月の暑い季節になった。先生は学校の近くに店を持つ後藤先生だった。

大きな扇風機を四隅に置いて、作業は屋内実習場で行なった。

この年は例年に無く、暑い夏だったのだが、この屋内実習場のためかなり楽だった。

夏場の外構工事は、建物の西側から始め太陽の反対側を回って家の周りを工事すると言う(後藤先生の話し)。

植木屋は、夏場の暑さが勝負だと先生や先輩が皆言う。

 

訓練カリキュラムの合間に庭園見学の時間が何回かあった。

新宿御苑、金沢八景称名寺、鎌倉光明寺、大船フラワーパーク、三渓園、浜離宮、五島美術館、清澄庭園

などを訪れた。一種の息抜きでありハイキングのようでもあった。

 

 

カリキュラムについては、毎年見直しが行なわれているようである。

1年間の訓練期間も、2年後には無くなり半年コースになると聞いた。

技術校で習ったことが現実の造園の仕事の中でどれほど役立つのか、関係者も悩んでいるようである。

つまり世の中の住宅に庭が無くなってきており、竹垣も庭石も作る機会がほとんど無いのだ。

 

日本の住宅事情は、土地への投機熱が醒めても、細切れ宅地が多いのは変わりそうもない。

東京への人口の集中、住宅の集中が続く限り、庭付きのマイホームは実現せず、

造園技術もだんだん無形文化財となっていくのかもしれない。

 

 

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