林道を走る
その昔、学生時代に先輩から、車の運転の得意、不得意にはタイプがある、
と言われたことがある。
街中の道を車線変更をしながら縫うように走り抜けるやつが
山道で、クネクネと曲がりくねった狭い道に来るとやたら下手くそにになる。
一方、山道に慣れたやつは、街の中を上手に走れない。
何故そんなことを言ったのか分からないが、私がどちらかに下手だったのだろう。
私は、都会のネズミではなく、田舎のネズミだったのだと思う。
今、どちらも得意、不得意無く走っているつもりだが、山道の方が格段に楽しい。
自然破壊と無駄遣いの墓標のようなスーパー林道ではなく、
以前からの、川のどん詰まりで終わりになる、単なる林道をよく走った。
奥多摩の日原林道では、夕暮れの中、走る車の前を
5〜6頭の鹿の群れが走って横切っていったことがある。
林道を横切るということは、山の法面を上から下に走り抜けたのである。
まるでそこに林道など無いかのように、地響きを立てながら
駆け下る鹿の群れに呆然とした記憶がある。
多分、鹿の方も油断していたのだろう。
林道は当然未舗装の部分が多い。
ぬかるみ、砂利道、砂ぼこり、落石などなど障害物も多く危険でもある。
奥秩父の大洞川の河原に、黒い車の残骸が落ちていたことがあった。
林道までは50mくらいあった。
車内には勿論、死体などは無かったが乗っていた人は大丈夫だったのか。
粗大ゴミとして棄てていったのなら、許されざる犯罪行為だ。
一般に林道の管轄は農林省であり、国道、地方道とは異なる。
事故があれば当然、ゲートが下ろされ通行止めになる。
渓流釣や山登りで、いつも使っている林道をあてにして行くと
かなり手前で通行止めになっていて、1〜2時間余計に歩かされることが時々ある。
気持ちの上では、林道は無い方がよくて、あるから仕方なく使っている、
のだがやはり、予定が狂うと気分が悪い。
むかつくことがもう一つある。林道から下へ投げ捨てたゴミである。
奥多摩、小菅村のクリーンアップ作戦に参加したことがある。
私の参加したグループは、村の中の河原の清掃で、思ったよりゴミは少なかった。
午後になり、峠の方から降りてくる車には山のような戦果物が載っていた。
テレビ、洗濯機、タンス、ソファー、などなど、まるで引越しの車だ。
棄てる人は、峠の方まで行って棄てているのだから、人に見られたくないのだろう。
罪の意識があるのか、見られていなければ何をしても良いというスケベ根性か。
日本人の精神の貧困さを見せられた気がした。
しかし、よく考えれば林道が無ければゴミも棄てられない。
やっぱりこれ以上、山に道を作るのは止めて欲しい。
あるいは林業など仕事以外では通行止めにすべきである。