ヤツデ

学名 Fatsia japonica
別名 テングノウチワ
八角金盤(中)
八手 分類 ウコギ科ヤツデ属 (常緑低木)
葉が掌状に多裂するための名。しかし、裂数は8つではない。裂状の葉の裂片は、通常奇数になる。ヤツデも9裂が多い。 原産・分布 本州(茨城県以西の太平洋側)、四国、九州、沖縄。
神奈川県 丹沢、県北部を除き見られる。栽培の野生化が多い。
用途 庭木
林内に生える。高さは2〜4mで、枝分かれは少ない。庭木として植えられたが、最近は野生化したものが多い。
手の形の大きな葉が、人を招くと言う縁起から、玄関脇に植えられたり、典型的な陰樹で日陰でも育つことから、庭の隅や、中庭などに植えられた。


品川区
林試の森041031
ヤツデ樹
実が熟してこぼれる頃、花序の脇から、茶褐色の綿毛が密生した幼葉を多数出す。手がにょきにょき生えるさまは、まるで怪奇映画だ。後に無毛になる。
1年に生える葉は、この時に全て用意されているようだ。外側、つまり下側になる葉が、いち早く展開し、より長く葉柄を伸ばす。
新葉

横浜市
港北区
060419
ヤツデ新葉
葉は、互生で、茎の先に集中する。葉身は掌状の円形で、7〜9裂し、裂片には鋸歯があり、鋭尖頭、質厚く、光沢がある。
別名のとおり、天狗の葉団扇(はうちわ)、である。
陰樹でも光は欲しい。下の葉になるほど葉柄が長くなり(15〜45cm)、必死に光を受けようとする。
民間薬として葉を乾燥させたものを鎮咳、去痰では服用し、リューマチには浴剤として用いた。成分はサポニンであり、多量に摂取すると下痢、嘔吐、溶血などの障害がでる。


川崎市
(植栽)
041215
ヤツデ葉
10〜11月に茎頂に花序を付ける。花序は、球形の散形花序を円錐状に多数付ける。開花は、円錐状の頂部から始まり、散形花序の単位で順番に開く。花期の間に、全部の花が開花する訳ではないらしい。基部の方では、咲かずに終わる散形花序もあるようだ。環境変化に耐えられるための、予備資源らしい。 花序

横浜市
港北区
061107
ヤツデ花序
1つの散形花序には、多数の白い花が付く。1つの花には、雄性期と雌性期があり、初めは花弁と雄しべがある雄性期。両方が落ちると、柱頭が伸びて雌性期になる。自家受粉を避ける工夫だ。
晩秋に花を咲かせるため、晴れた暖かい日に、ハナアブやハエが来るのを待つ。
花(雄性期)

川崎市
多摩区
(植栽)
041101
ヤツデ花
果実は球形で4〜5月に黒く熟す。この実を、鳥が食べて種子を散布する。鳥の繁殖期を狙っている。
ウコギ科の実は、どれも同じような形状をしている。



熟した実 横浜市港北区 060419
若実

品川区
林試の森
050325
ヤツデ若実
大きな葉を支えるために、葉痕は大きなV字型をしている。維管束痕は11個。葉の裂片の、それぞれの葉脈につながっていると思うのだが、数が合わない。
V字の上の、黒くなっている部分が、何か不気味な顔に見える。そう言えば、鼻のところにある青い点はなんだろう。
葉痕

横浜市
港北区
071121
ヤツデ若実
こぼれ話 「空気鉄砲」
子供の頃、竹や笹の筒で空気鉄砲を作った。この実を1つ、筒の先に詰め、もう一つを後ろから一気に押し込むと、先の実が「ポン」と飛び出た。だから、大きな実がたわわになると、子供達がみんな採ってしまった。この実の写真を見ていて、思い出した。

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