コウヤボウキ

学名 Pertya scandens
別名 タマボウキ、ウサギカクシ、キジカクシ
高野箒 分類 キク科コウヤボウキ属 (落葉小低木)
かつて和歌山県高野山では、弘法大師の教えで果樹や竹などの植栽を禁じられていたため、この植物で作った箒が用いられていたことによる名。 原産・分布 本州(関東以西)、四国、九州、中国
神奈川県 海岸近くからブナ帯下部まできわめて普通。
用途 現代では特になし
やや乾いた明るい雑木林の林床や林縁に生える。一見草本状だが、よく枝分かれして、細い枝を四方に伸ばし50〜100cmほどになる。
キク科では珍しい木本に分類される。


埼玉県
比企郡
嵐山町
091024
コウヤボウキ樹
1年枝には葉が互生し、2年枝は写真のように各葉腋から新しい枝が分岐するか、各節から短枝状に数枚の葉が束生する(最下写真)。若い枝には細毛が密生する。

上野原市
秋山二十六夜山
140519
コウヤボウキ樹
葉は2〜5cmの卵形で互生する。表裏ともに伏毛があり、3脈が目立つ。縁には歯状の低い鋸歯がある。 枝・葉

埼玉県
比企郡
嵐山町
091024
コウヤボウキ葉
9〜10月に本年枝の先端に、キク科の花の特徴を示す白い頭花を一つつける。頭花は小さい筒状花が13個前後集まっている。下部は総苞片が重なり円柱形なる。
両性花ではあるが、雄性先熟で拡大すると雄性期と雌性期の違いがよく分かる。
花言葉「働き者、清潔」 なるほど箒の印象そのもの。


埼玉県
比企郡
嵐山町
091024
コウヤボウキ花・葉
果実は痩果で5.5mmほど。複数の種子の冠毛が開くと全体で白い毛玉ができる。痩果が飛ばされた後には総苞が残り、冬の間、花のようにも見える。

神奈川県
二宮町
100109
コウヤボウキ実
種子はキク科のタンポポなどと同様に、剛毛でできた1cmほどの冠毛があり風で飛ばされる 種子

上野原市
秋山
140113
春には地面から湧き出るように、柔らかな葉を開く。
一年枝(これから伸びる枝)には互生するが、二年枝には巾の狭い葉が束生する。
新葉

道志山地
石砂山
100418
こぼれ話 「玉箒」
名前の由来のとおり、高野山で使われていたではあるが、かつては様々なところで使われていたようだ。蚕室の掃除、木綿についたチリ払い、酒樽についたにごりの泡をふき取るなど、屋内や狭いところのちり取りに手箒として使われていた。
古くは奈良期の宮中では、中国伝来の宮中行事にのっとり正月初子(はつね)の日に天皇が田を耕し、皇后が蚕室を掃ってその年の豊穣を願う儀式が行われていた。このときに使われるのがコウヤボウキの枝を束ね、宝玉の飾りを付けた玉箒である。

天平宝字2年(758年)正月3日に、宮中で群臣らとともにこの玉箒を賜り、大伴家持が詠んだ歌が万葉集にある。
初春の初子の今日の玉箒 手に執るからにゆらく玉の緒
そのときの玉箒が奈良東大寺の正倉院に保存されている。正月子日の儀式用具として天皇の使う「子日手辛鋤(ねのひのてからすき)」と一緒に保存され、「子日目利箒(ねのひのめどきぼうき)」と呼ばれている。
右写真(画像提供:東京国立博物館)。ただしこの写真の箒は展示用の模造品らしい。

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