植物にゆかりの色

花の色がそのまま名前になった色、草木染めでできた色など植物が元となる色を集めました。樹げむの植物園に登場する草や木に限られていますが、その風情をお楽しみください。昔からの独特な呼び名がついているものが多くあります。
色名および色についてWikipediaの「色名一覧」を主に参考にしています。表示している色はサンプルであり厳密なものではありません。色名の下にJISとある色はJIS慣用色名に採用されている名前。植物の写真をクリックするとその植物の説明になります。色名の順に掲載しています。

藍色
あいいろ

JIS
アイタデ
(未収録) タデ科のアイタデの葉を発酵させ染料とする染色を藍染めと呼ぶ。藍染めに少量の黄を加えた緑みのある青色。江戸時代に江戸前の色として広く愛用された。海外ではJapan BlueあるいはHirosige Blueと呼ばれる。現代では合成インディゴが工業的に用いられ、ジーンズなどの染色に使われる。
アイビーグリーン
JIS

キヅタ
キヅタの葉の色。
茜色
あかねいろ

JIS
アカネ
アカネの根を使う茜染めで染めた色。わずかに黄みを帯びた沈んだ赤色のこと。枕詞「茜さす〜」として「日」「昼」「照る」「紫」を修飾する。夕焼けの空の色に例えられる。
空五倍子色
うつぶしいろ

ヌルデ
古くから喪服の色として使われた。ヌルデにできる虫こぶ、ヌルデミミフシ(写真)で染めた色。お歯黒染と同じ原理。
卯の花色
うのはないろ

ウツギ
ウツギの花の色。純白ではない。
梅染
うめぞめ

ウメ(紅梅)
室町時代から行われた染色。赤味のある淡茶色。男性や若衆に人気があったとされている。産地名を付けて山城梅染、加賀梅染と呼ばれ、染法により色調が異なった。梅の樹皮や心材を細かく砕き煮出した染液(梅屋渋)を使う。
裏葉柳
うらばやなぎ

ネコヤナギ
ヤナギの葉の裏の色。
ヤナギの種類に定説は無い。万葉集にはシダレヤナギが多いが、青柳と呼ばれているそうだ。色の風情は春のネコヤナギの印象か。
江戸紫
えどむらさき

JIS
ムラサキ
(未収録) 江戸時代に流行した色。ムラサキの根(紫根)を染料として染めた色。歌舞伎「助六由縁江戸桜」で助六がこの色の鉢巻きをする。ムラサキはもともと薬草でもあり、頭に血が上りやすい助六の熱さましとして使われたものだが、芝居のヒットとともにこの色の鉢巻きが流行ったとされる。
葡萄色
えびいろ


エビヅル
エビヅルやヤマブドウの実で染めた色。エビヅルの語源にある通り、同時に伊勢海老の甲羅の色でもある。
エルムグリーン

ハルニレ
ハルニレの葉の色。
黄丹
おうたん

JIS
ベニバナ、クチナシ
クチナシの下染にベニバナを上掛けした色。曙の太陽の色を表すとされ、太宝令・衣服令では皇太子の袍色として禁色とされた。黄丹という語は赤色顔料である鉛丹の別名でもある。
樗色
おうちいろ

センダン
センダンの花の色。樗はセンダンの古名。発音はアフチに近く、淡い藤が語源とされている。
女郎花
おみなえし

オミナエシ
オミナエシの花の色。緑味を帯びた黄色。夏〜秋のオミナエシの咲くころに着る色とされた。
オリーブ

オリーブ
オリーブの実の色。
柿色
かきいろ

カキノキ
カキの実の色。
樺色
かばいろ

JIS
ヤマザクラ
赤みの濃い茶黄色のこと。蒲色と書いて蒲の穂の色とする説もある。染料は諸説ある。八丈島で産した黄八丈の樺色はタブノキの樹皮を用いた。ヤマザクラの樹皮を染料とするのは、樹皮の色を樺色と言ったことからか、樹皮を茶筒などに細工したものを樺細工と言ったことからか不明。
黄膚色
きはだいろ

JIS
キハダ
キハダの樹皮で染めた色。キハダには防虫効果があるとして、保存用の経典や公文書は木膚染の紙が使われた。
梔子色
くちなしいろ

クチナシ
クチナシの実の色。クチナシの実を染料として染めても薄い黄色になる。これにベニバナの赤を重ね染した。
栗色
くりいろ

クリ
クリの実の色。
胡桃色
くるみいろ

オニグルミ
クルミの実の色。
紅色
くれないいろ

ベニバナ
ベニバナの花から、黄色の色素を取り除いた染料で染めた色。奈良・平安時代から貴族に愛好された。当時はまだベニバナは高価だったため、濃く染めることは禁制だった。からくれない、べに色とも。
桑染
くわぞめ

ヤマグワ
クワの樹皮で染めた色。
黄櫨染
こうろぜん

ヤマハゼ
ハゼノキによる黄色の下染に蘇芳または紫根を上掛けした黄褐色とされる。染色法は延喜式に定められ、天皇の晴れの儀式に着用する袍の色と決められている。天皇以外は使うことのできない禁色とされた。しかし染色法が難しく、同じ色の再現が難しいとされその色調についてはいろいろな説がある。
媚茶
こびちゃ

ヤマモモ
江戸後期(天保)に流行した茶色の一つ。江戸初期ではその色合いから昆布茶と呼ばれたが、後に色っぽく語呂合わせで付けられた媚茶が流行った。ヤマモモの樹皮で染めたとされる。
スプルース

トウヒ
トウヒの葉の色。
菫色
すみれいろ

JIS
タチツボスミレ
スミレ(タチツボスミレ)の花の色。
千草色
ちぐさいろ

ツユクサ
ツユクサの花の色。チグサとはツユクサの古名「つきぐさ」からの変化。空色に近いとされる。江戸時代には丁稚の股引などの庶民の日常着に用いられた。
茶色
ちゃいろ

チャノキ
チャノキの葉を煎じた汁を染料として染めた色。
橡色
つるばみいろ

クヌギ
クヌギ(別名ツルバミ)のドングリ(殻斗)や樹皮の煮汁を染料、鉄を媒染材とした紺黒色。万葉集では庶民が使う質素な色だったことが分かる。平安期には灰汁を媒染とする黄褐色を表すようになる。前者を黒橡、後者を黄橡と呼ぶことがある。
撫子色
なでしこいろ

カワラナデシコ
ナデシコの花の色。
黄櫨色
はじいろ

ヤマハゼ
ハゼノキの樹皮で染めた色。黄櫨染(こうろぜん)とは異なる。
縹色
はなだいろ

JIS
ツユクサ
薄い藍色を指す。花田色とも書いた。藍染めの色であるが、ツユクサの花の色とも、花の汁で染めた色ともいわれる。同様の意味では千草色、露草色などの表現もある。
緋色
ひいろ

アカネ
茜染めの一種。茜色が暗い赤色なのに対し明るい赤色。アカネとともに染め上げる材料(紫根あるいは紅花)の種類により深緋(こきあけ)、紅緋(べにひ)などと区別される。英語のスカーレットに同じとされる。
檜皮色
ひわだいろ

JIS
ヒノキ
ヒノキの樹皮のような赤褐色。色名は平安時代の物語に出てくる。江戸時代では蘇芳あるいは茜をベースに灰汁で染めたとされる。
藤色
ふじいろ

ノダフジ
フジの花の色。
松葉色
まつばいろ

アカマツ
マツの葉の色。
柳色
やなぎいろ

シダレヤナギ
ヤナギの葉の色。
山吹色
やまぶきいろ

JIS
ヤマブキ
ヤマブキの花のような赤味の冴えた黄色。江戸時代には小判を指す隠語として使われた。梔子と茜、あるいは紅花を用いて染めたとされる。
蓬色
よもぎいろ

ヨモギ
ヨモギの葉の色。