2004年12月11日、12日に、樹木・環境ネットワーク協会主催の炭焼き体験教室に参加した。場所は、長野県佐久町。地元の吉本(林業)で、50年ぶりに炭焼き窯を再現し、炭焼きを復活させる、と言う話に便乗した企画である。参加者は総勢6名で、体験教室としてはちょうど良い人数だ。
今年の春に、炭焼き窯を作り、この冬に実際に炭を焼きはじめたらしい。炭材は、コナラを中心に広葉樹を使う。作る炭は白炭である。白炭は、炭がほぼ焼き上がる頃、窯の蓋を開け、空気を送り込み、温度を一気に上昇させた後、炭を窯の外に取り出し、灰や砂等をかけて急冷させて作る。
先生は、75才になる由比音一さんと良一さんのお二人である。この近郊では、由比姓が多いそうで、兄弟ではないとのこと。この辺りに多いカラマツの話をすると、北原白秋の詩を諳じる、教養豊かな古老(まだ若い)だった。
12月11日(土)
炭窯は吉本の社友林の中、林道のすぐ脇に作成されていた。昼に着くと、各自持参の昼食を食べながらの自己紹介と雑談。
窯には既に、昨日から焼いている炭が待っていた。昼食が終わると早速、炭焼きのクライマックス窯出しである。以下写真でどうぞ。
窯の中を覗く。新しい空気が入ることにより、窯の中は白っぽくなる。 | |
「金えぶり」を使って、白熱の炭を窯から掻き出す。これが本当に暑い。窯の口には近づけない。 | |
出てきた炭。表面が白くなっていることから白炭と言う。 | |
「大えぶり」を使い、炭を片側に寄せる。「大えぶり」は木製なのでそのうち燃え出す。「えぶり」とは「いぶす」が変化したらしい。 | |
集めた炭に砂や灰をかけて、空気を遮断し火を消す。砂が少ないと、翌日全てが灰となっている。 | |
以上を繰り返す。参加者は、見よう見まねで体験することになる。 |
ここで、伝来の道具を紹介する
名前を聞き忘れた。手製の振いである。目の大きさに大小があり大きい炭をえり分けられる。手前が音一さん、向こうが良一さんの両先生。 | |
大えぶり。先端は木製だが、ともかく重い。重さで炭をかき寄せる。 向こうは窯を横から見た所。 |
炭を全てかき出し、砂をかぶせると、続けて新たに焼くための炭材を、窯に入れる作業が始まる。あの狭い窯の口からどうやって炭材を入れて、窯の中に並べるのか、興味深々だった。
まず、窯の口の前の地面を冷やすために、赤土を運んで敷く。 | |
使う道具はこの2つ。右は「さすまた」、左はただの棒あるいは「つっつき棒」。もう一つ「ことび」と言う、引っかけて材を引っ張り出す道具もある。 | |
炭材の細い方を先にして、窯の中に入れ、「さすまた」で押し込み、手前を一気に持ち上げて、壁に立てかける。 | |
炭材が斜めになったら「突っ付き棒」で向きを微修正する。炭材は、窯の熱で、見る間に自然発火する。当然、こちらにいる人も暑い。 | |
上の作業を繰り返し、炭材を窯一杯にする。途中で「さすまた」が使えなくなるので、後半は、炭材を投げ込んで立てかける。最後は窯の口に、燃焼用の薪を入れる。 | |
窯の口を蓋する。隙間に、赤土を水で練った粘土を詰めて密閉する。空気の量の調節は、下の2個のレンガの間で行う。このとき既に、窯の中の炭材は燃えはじめている。 |
時間は前後したが、初日に窯入れから、窯出しまで体験できた。言われるままにやっていると、意外と簡単である。先生からも初めてにしちゃ上出来だ、とお褒めの言葉を頂いた。しかし、炭焼きの難しさ、面白さは、一連の作業にあるのでは無いのだろう。炎の色、煙の色を読んで良い炭を焼くことが難しいのだと思う。
ともかく参加者は、仕込んで蓋をした窯を後にして、今日の宿泊所に向かうことにした。自分達が仕込んだ炭材が、キンキン音がする白炭になることを期待しながら。