樹も、年をとると丸くなる

 

2006年2月2日

 

 

今日は節分である。
節分の日の夕方に、ヒイラギの枝に鰯の頭を刺して、門や玄関に飾る風習がある。
ヒイラギの葉の棘が、邪鬼を追い払うという、言い伝えが元だそうだ。鰯にどんな意味があるのかは、よく知らない。
ヒイラギの葉は硬く、確かに棘は痛い。かなり鋭い棘である。

ところで、上の写真は何の樹でしょう、と言われてヒイラギだと分かるだろうか。遠くに棘のある葉が写っている。
図鑑などには、老木になると棘の無い、全縁の葉になる、と書いてある。
実際には、それほど老木でなくても、春先に出る新葉は、写真のように棘のないものが増えてくる。
年をとるに従い、トゲトゲしさが薄れ、丸みを帯びるのは、人間だけではない、と言うことか。

 

樹の写真を撮り始めて、同様に老木になると棘が無くなる、と言う変化は外にもあることに気がついた。
例えばモミの葉である。モミの葉も、先端が痛いものと、痛くないものがある。
下の写真は、右の方が若木。葉の先が、鋭く尖っていて、触ると痛い。左の葉は痛くない。

 

棘は、やはり樹の護身術だと思う。外敵、たぶん動物が自分の葉が食べることから、免れようとしているのだろう
若い時に、葉をムシャムシャと食べられてしまうとダメージは大きいが、大きくなれば、少しぐらい食べられても平気なのだろう。
しかし、ヒイラギやモミの葉を食べる動物なんて、いたのかしらん。
ひょっとすると、ヒイラギという種が生れ出るころには、いたのだろう。それは恐竜の子孫なのかも知れない。

 

棘ではないが、若い時にはあった葉の縁のギザギザが、年をとるとなくなる樹がある。
言葉を代えれば、若い時は鋸歯葉だが、老木になると全縁になる樹である。



上:ヤマモモ単葉 左:幼木 右:成木 下:オオモクゲンジ複葉 左:幼木 右:成木

 

キヅタやカクレミノの葉は、若い時には掌状に3〜5裂する。例外として花のすぐ下の葉は裂状にならない。
ところが老木になると、どの葉も裂状にならないと言う。これは護身とは関係なく、単に不精になったような気がする。

葉が掌状に分裂する樹は、いろいろある。カエデの仲間がそうである。
面白いのはヤマグワだ。分裂しない葉から、5裂する葉までいろいろあり、それが一本の木に混ざって付く。
全くの気まぐれとしか言いようがない。

 

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